2014年10月31日金曜日

リニア工事認可後初の説明会(2014年10月30日東濃リニア通信より)

名古屋で工事認可後初のリニア工事説明会。

しんぶん赤旗(2014年10月29日)
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中日新聞(2014年10月28日)
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2014年10月30日木曜日

リニア、採算は取れるのか?巨額建設費と債務を一社で負担、コスト上昇・・・(ビジネスジャーナル2013年12月10日)

リニア新幹線、採算は取れるのか?巨額建設費と債務を一社負担、コスト上昇、運賃収入…

東海旅客鉄道(JR東海)は、2014年度着工予定のリニア中央新幹線の詳細なルートと駅設置場所を発表した。27年にまず東京(品川)-名古屋間、45年に大阪までの全面開業を目指す。
 リニアの最高速度は時速500キロ。400キロ台の上海リニアをしのぎ、陸上の交通手段としては世界最速になる。超高速を最大限に生かすために、ルートは直線に近いかたちになる。東京-名古屋間は総延長286キロで、最速の40分で走り切る。東海道新幹線の同区間より走行距離を2割短縮した。南アルプスなど山岳地帯を貫く名古屋までのルートの86%は地下やトンネル内の走行となり、およそ旅情とはかけ離れた移動手段になりそうだ。
 リニア新幹線が日本経済に与えるインパクトは大きく、安倍首相は「日本のインフラ輸出の大きな武器」と評価している。JR東海などは米国など海外への輸出を視野に入れており、三菱UFJリサーチ&コンサルティングは東京-名古屋間の開業で10.7兆円、大阪延伸で16.8兆円の経済効果があると試算している。
 沿線ではその経済効果への期待が高まっているが、現在の新幹線の駅以上に「観光客は通り過ぎるだけ」との冷ややかな見方もある。
 最大の懸念は、JR東海という民間企業が9兆円もの建設費用を全額負担することだ。政府の支援は一切ない。山岳地帯を貫くトンネルは難工事が予想され、建設費が膨らむことは避けられそうにない。アベノミクスで長期金利も上がると見込まれている。
 1964年10月1日、東京オリンピックの開催に合わせて東海道新幹線が開業した。新幹線に関して必ず出てくる批判は「世界三大馬鹿論」である。新幹線は「戦艦大和、万里の長城、ピラミッド」の世界三大馬鹿と並ぶ愚行であるという批判だ。「世界三大馬鹿と並ぶ愚行」というフレーズは、新幹線批判派が盛んに使い、新幹線が成功した後には、新幹線に携わった関係者が著書などで「心ない批判の例」として引用してきた。この「新幹線愚行」論が再燃したのは、国鉄分割・民営化の時だ。新幹線が開業した64年度から国鉄収支は赤字に転落し、以後、赤字は拡大。結果的に新幹線建設は国鉄の経営破綻の元凶といわれた。
 旧国鉄から新幹線事業を引き継いだJR東海の葛西敬之現会長は「東海道新幹線はあくまで内部留保された資金と借金で建設資金を賄い、それらを運賃・料金収入のみですべて回収するものであり、新幹線建設が国鉄破綻の引き金を引いたという認識は誤りだ」と反論している。

●JR東海にのしかかる巨額建設費

 そして今、葛西会長が主導するJR東海のリニア中央新幹線建設計画にも懸念の声が上がっている。国鉄分割民営化当時の債務37.8兆円のうち、設備投資分5.93兆円をJR各社が、5.63兆円を新幹線鉄道保有機構が引き受け、残り25.52兆円を旧国鉄清算事業団が引き継いだ。新幹線鉄道保有機構の5.63兆円は新幹線を保有する東日本、東海、西日本がリース料として分割して支払うことになり、設備投資分と新幹線分を合わせて11.56兆円をJR各社が負担した。
 このように旧国鉄の債務はJR各社が分担して引き継いだが、今回のリニア中央新幹線の建設資金は、JR東海1社が全額負担することになるわけだ(ちなみに今年9月末現在のJR3社の「鉄道施設購入長期未払金」は、JR東日本が7410億円、JR東海が9435億円、JR西日本は2333億円。これは設備投資を引き継いだ分であり、新幹線のリース残高は各社の貸借対照表に出てこない)。
 確かにJR東海の業績は好調である。14年3月期の連結決算の売上高は前年同期比2.3%増の1兆6210億円、営業利益は同4.2%増の4440億円、純利益は同14.5%増の2290億円の見通しで、純利益は2期連続で最高益を更新しそうな勢いだ。
リニア中央新幹線のビジネスモデルは東海道新幹線と同じである。内部留保(利益剰余金)と借金で建設費を賄い、運賃・料金収入でそれを回収するというものだ。JR東海の9月末時点の内部留保は1兆5841億円と厚いが、一方で借入金・社債・鉄道施設購入長期未払金の有利子負債として2兆6022億円を抱える。来期にリニアに着工すれば、借入金はさらに増える。全線開業時の債務は5兆円程度に膨らむ見通しだ。ここに安倍晋三政権が掲げる2%の物価上昇がもし実現すれば建設費は高騰し、金利も上昇する。

●第2のJAL化を懸念する声も

 一方で、運賃収入は東海道新幹線開通時のようにはいかない。リニアを開業しても既存の新幹線から乗客がシフトするだけで、東海道新幹線開通時ほど大きな運賃収入は見込めないといわれている。最悪9兆円に上る巨額建設費を回収できない場合、JR東海は過剰債務を抱えた旧国鉄に逆戻りする危険性を指摘する声も上がっている。JR東海の山田佳臣社長は「リニアだけでは絶対にペイしない」(9月18日の記者会見)と発言しているが、JR東海も「リニア単独での投資回収を目的とする計画ではない。新幹線の経年劣化と大規模災害に備えるために大動脈を二重化する」との公式見解を示している。
 また、全国的に広がる原発停止も影を落とす。リニアの消費電力は新幹線の3倍といわれており、葛西会長が「全原発の再稼働」を主張するゆえんでもある。
 リニア建設・運営の採算が取れずJR東海の財務を圧迫することで、同社が一時経営破綻したJALと同じ道を行く可能性を懸念する声も上がる中、果たしてリニアはさまざまな懸念や批判をはねのけ、事業として成功するのか? 日本中の注目が集まる中、間もなく着工を迎える。
(文=編集部)

奈落への軌道 ー文明論からのリニア批判 川村晃生 (日本の科学者 2014年10月号)

「日本科学者会議」は、2014年7月15日に、「リニア中央新幹線計画の撤回・中止を求める声明」を出し、市民運動との連帯を表明したが、機関紙「日本の科学者2014年10月号では、特集を組んだ。
 特集「超伝導磁気浮上式「リニア新幹線」の徹底解剖ー文明論、基礎技術、環境保全、経済などの視点から」と題して、リニア計画への全面的な批判を展開し、リニア計画の問題点を多方面から全面的に明らかにした。
是非とも購入して一読して頂きたいが、ここでは、その巻頭言(川村晃生慶応大学名誉教授)「奈落への軌道 ー文明論からのリニア批判」を転載する。file:///Users/hitoshi65/Desktop/5Yik44CNIO+8iOaXpeacrOOBruenkQ=.pdf  で検索してください。

2014年10月29日水曜日

リニアトンネル残土受け入れ 岐阜県内は43カ所に

岐阜県は、10月28日、県内のリニアトンネル残土受け入れ候補地を新たに5カ所(恵那、多治見、中津川)をJR東海に提案した。JRは、県内に県、沿線自治体、民間事業者に940万立方メートルという膨大な量を「譲渡」する方針だというが、本来、この残土は所有者のものである。所有者が譲渡するなら話しとしては分かるがJRが他人の物を勝手に他人に「譲渡」などできない。所有者は、区分地上権設定契約を十分吟味して諾否を決める必要がある。




file:///Users/hitoshi65/Desktop/hasseido-kouhoti.pdf

2014年10月26日日曜日

リニアを考える可児の会ニュースNo.7(2014年10月26日)

リニアを考える可児の会ニュースNo.7 (2014年10月25日)

 10月25日(土)中津川市の「チコリ村」で開催されたリニア問題学習会(主催 リニアを考える岐阜県民ネット)は、参加者130名で、主にリニアの土地問題(法律問題)を中心に講演と質疑がありました。二人の講師(岡本浩明弁護士、古賀哲夫教授(民法)の話は、

岡本さん
 
土地問題については、憲法29条の財産権は、制度も含めて不可侵とされているが、その内容は
 ① 公共の福祉に適合するように法律で定めること
 ② 私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。
とされている。このことから、私企業であるJR東海も、「公共のため」の「公共事業」であれば国民の私有財産である私有地を土地収用できる可能性があり、その法律は土地収用法である。
 従って、リニア計画が「公共のため」になっているかが、もっとも重要な判断基準で、リニア計画が公共のためになっていないことをより多くの国民に知らせ、連帯運動を広げ、国民的な反対運動の中で、法的手段も早期に考えて行くことが大切。

古賀さん

 住民軽視のJR東海および国交省の強引なリニア工事着工認可に対抗するには、
① JRに、リニアのための「非常階段及び排気塔設置に必要な土地を売らないこと。
   排気塔からの騒音と汚れた空気は、周辺住民の健康に悪影響を与える。(これは住民に対
   する継続的生活妨害行為である)

② JRに、区分地上権設定のために土地を貸さないこと。
   
   イ リニア計画には、騒音、振動、電磁波、トンネル残土(黄鉄鉱やウランを含む)、景
     観、稀少動植物など数々の問題点が指摘されており、大飯原発差し止め判決でも示さ
     れたとおり、「憲法上の基本的権利という根源的な権利が広範に奪われるという危険
     を抽象的にでもはらむ経済活動は、その存在自体が容認できないとまではいえない
     が、少なくともかような事態を招く具体的危険性が万が一にでもあればその差止めが
     認められるのは当然である。民法上、土地所有権に基づく妨害排除請求権や妨害予防
     請求権においてすら、侵害の事実や侵害の具体的危険性が認められれば、侵害の過失
     の有無や請求が認容されることによって受ける侵害者の不利益の大きさという侵害者
     の事情を問うことなく請求が認められる。
   ロ 地権者(所有権者等)には不利な条件が課されることが多いから、仮に地上権設定契
     約を結ぶとしても、契約の際には、第三者の立ち会いと、地代の年払いの確約が重要
     です。
   ハ 半永久的にJRに土地を使われてしまうという危惧を覚悟すること。(つまり所有権を
     失うということ)
③ 居住の自由に関する最近の動向
   リニア岐阜駅(中津川)のために、岐阜県が道路を造る計画を作成し、ルーと上の民家7
   8軒を立ち退かせる計画を発表した。これは生活権(居住権)の侵害であり、立退につい
   ての法的根拠が明示されなければならない。本来行政の目的は、国民の憲法上の権利を守
   ることが存在意義なのである。
④ 工事をストップさせるには、「差し止め請求権」の行使が有効と考えています。
   イ 環境権について
     環境権は、憲法上の基本的人権として認められるというのが、最近の通説である。
   ロ 景観については、最高裁は、「権利」と言わず、「法律上保護された利益」としている。
   ハ 「差止め」についての最近の考え方
     ● 地域住民の同意を得る民主的手続きは適切であるか。(これには情報公開が前
       提)    
     ● 環境影響評価の手続きの不備や事前調査の欠如ないし不備はないか。
     ● 「この地域で形成されてきた慣習」があるか、等に差止めの根拠を求める立場。
⑤ 課題
  イ 継続的不法行為の反復とその継続を阻止する差止めは可能か。
  ロ リニア・ルート周辺の住民が、どの範囲で、原告適格があるかは、今後の課題ですが、
    大飯原発差止め判決の理論を検討する必要があります。

      

2014年10月23日木曜日

「リニア着工認可」造る意義の説明が必要(南日本新聞2014年10月23日社説)

[リニア着工認可] 造る意義の説明が必要
( 10/19 付 )
JR東海が2027年に東京・品川-名古屋間で開業を目指すリニア中央新幹線の着工を、国土交通相が認可した。
 日本独自の超電導リニア技術を世界で初めて高速鉄道に導入し、最高時速500キロ超で浮上走行する。最終的には45年をめどに大阪まで延伸し、東京-大阪間を67分で結ぶ総額9兆円を超える巨大プロジェクトである。
 国の基本計画決定は1973年のことだ。40年以上を経て、新たな「夢の超特急」が実現へ大きな一歩を踏み出した。
 だが、この間に日本を取り巻く環境は激変し人口減少社会に突入した。右肩上がりの成長が望めない時代に、一層の時間短縮を目指す意義が分かりにくい。
 着工を認めた政府は、リニアを造る意義と、その効果について説明責任を果たしてもらいたい。
 名古屋までの工費は約5兆5000億円。大阪までの延伸を含めてJR東海が全額負担する。国の財政状況が悪化し公共事業費の削減が続く状況を考えての決断に違いない。段階的な整備は、借金を抑える経営判断からだという。
 JR東海は「日本の大動脈を二重化する、これからの日本に不可欠なプロジェクトだ」と強調している。開業から半世紀が過ぎた東海道新幹線のバイパスとしての役割や、南海トラフ巨大地震など災害への備えである。
 安倍政権は6月、成長戦略にリニアの早期整備を盛り込んだ。東京と名古屋などで巨大都市圏が形成されることによる経済活性化や、リニア技術を海外へ売り込む狙いがあるからだ。
 ただ、リニア整備は「さらなる東京一極集中を招く可能性もある」と国交省の審議会が指摘している。政府は地方創生を重要課題として一極集中への歯止めを掲げるが、矛盾はないだろうか。
 関西の政財界は地盤沈下を懸念して、大阪への延伸前倒しを主張している。政府は社会的な影響を慎重に評価したうえで、前倒しの是非を判断する必要がある。
 工事は難航が予想される。品川-名古屋間286キロの86%は地下や山岳トンネルで膨大な量の土砂や汚泥が出るが、うち2割しか受け入れの見通しはなく、安全性や計画性になお課題が残る。
 南アルプスを貫通することなどから、自然環境や景観を壊すと反対も多い。JR東海は沿線住民らへの説明を尽くしてほしい。
 民間企業が実施する事業としても、リニア整備は国土政策に影響する。政府はJR東海に丸投げするのではなく、もっと前面に出て国土形成の責任を果たすべきだ。

2014年10月21日火曜日

環境、採算不安、巨額リニア 見切り発車(東京新聞2014年10月18日)

環境・採算不安 積み残し 巨額リニア 見切り発車 

写真
 JR東海が東京・品川-名古屋間で二〇二七年開業を目指すリニア中央新幹線の工事実施計画は、国土交通省が十七日認可し、手続き上の「着工」となったことで、実現へ向けて動き始めた。東海道新幹線に代わる新たな高速鉄道への期待が高まる半面、環境への悪影響、大量の電力消費への心配などに加え、採算を不安視する声もある。 (小松田健一)
 環境面で大きな課題は、総延長の86%を占めるトンネルの掘削に伴って発生する建設残土だ。運搬時の騒音や振動に加え、処理地周辺の水質や生態系への悪影響など、さまざまな問題点が指摘されている。過去に例がない膨大な量だけに、全量処理の見通しが立つまでには難航が予想されている。
 また、南アルプス、中央アルプスなどの山地をトンネルで通過するため、水源に悪影響が及ぶ懸念もある。
 計画に反対する市民団体からは、JR東海が提出した環境影響評価(アセスメント)がこうした懸念への対処方針を十分に示していないにもかかわらず、国は認可したとの批判も出ている。
 原発事故を契機に省エネへの取り組みが進む中、大量の電力を使う点にも厳しい目が向く。リニア中央新幹線の消費電力は、東海道新幹線の新型車両「N700A」の四倍。JR東海は「電力会社の供給能力に問題が及ぶほどの消費電力ではない」と主張するが、さらなる省エネ努力が必要だ。
 東京-名古屋間で五兆五千二百三十五億円、名古屋-大阪間で三兆六千億円に上る巨額の事業費は全額をJR東海が自己負担する。同社は旧国鉄民営化後に五兆五千億円の債務を抱え、一三年度末の時点で二兆四千億円まで減らした。リニア建設で債務は再び増加に転じるが、今後得られる収益で少しずつ圧縮し、最大でも五兆円を上回らない程度に収める考えだ。

◆地域分断 相模原の車両基地予定地 住民大半 立ち退きも

 リニア中央新幹線で、首都圏唯一の中間駅が設置される相模原市のJR・京王橋本駅。その南西約十三キロの山あいにある同市緑区の鳥屋地区に「リニア車両基地 絶対反対!」の看板が立つ。ここに土が盛られ、東京ドーム約十個分の広さの車両基地が建設される。
 地区内の谷戸自治会は東西に分断され、四十世帯以上あるうちの三分の二が移転を迫られる可能性がある。JR東海の環境影響評価(アセスメント)は「自治会活動に一定の影響が生じると考えられる」としながら、車両基地の下にトンネルを通すことで通勤や通学に大きな影響は出ないとする。谷戸自治会の奈良信会長(62)は「トンネルができても自治会の結び付きは弱まり、多くの世帯が移転すれば地域コミュニティーが崩壊する」と危ぶむ。
 鳥屋地区には「夏はホタルが舞い、小鳥のさえずりで目を覚ます」(五十代男性)自然環境が残る。アセスメントは絶滅の恐れのあるオオタカの営巣地を地区内で発見したとして「事業による影響を低減するよう努める」と記載。環境相は六月の意見書で、希少猛禽(もうきん)類の繁殖に重要な地域を回避し、営巣期の工事の回避も検討するよう求めたが、JR側の具体的な対応はない。
 相模原市に隣接する神奈川県座間市は、建設工事に伴う地下水への影響を懸念する。水道水源の85%が地下水で、橋本駅周辺を通って流れ込んでいるが、アセスメントは市への影響に触れていない。市はJR東海に二度質問書を送り、詳しいデータや説明を要求。しかし、社員から「アセスメントの記載通り」という旨の説明が口頭であったのみという。
 市の担当者は「地下水位が低下する可能性がゼロではないため、危惧している」と話す。
 日本自然保護協会の辻村千尋保護・研究部主任は「アセスメントの目的の一つは住民意見を取り入れながら合意形成を図ることだが、JR東海が示すデータは科学的に妥当か否かすら評価できない内容。自らの主張を押しつけているだけのように映る」と指摘する。 (寺岡秀樹)


リニア 国民は着工を認めていない  (2014年10月20 ライブドアニュースより)

主張/リニア国交相認可/国民は着工を認めていない


 JR東海が2027年開業をめざすリニア中央新幹線(東京・品川―名古屋)の工事実施計画を、太田昭宏国土交通相が認可しました。JR東海の計画には周辺住民や関係自治体、自然保護団体などから多くの不安と懸念の声が相次いでいました。問題だらけの計画を、ほぼ無修正で認めた国交相の責任はきわめて重大です。多くの国民は計画を認めていません。JR東海は、日本の将来に重大な禍根を残しかねない無謀な計画を、強行すべきではありません。

新たなリスク抱え込む

 リニア中央新幹線は、時速500キロで品川―名古屋を40分程度で結ぶことなどを売り物に、JR東海が建設費を「全額負担」すると推進しているものです。45年には大阪まで延伸させる計画です。
 路線の8割以上を地下トンネルで結び、自然豊かな南アルプスの直下に大穴を開けるなど日本の大型開発史上、前代未聞の超巨大計画です。膨大に排出される残土をはじめ、自然・生活環境破壊、安全、防災など深刻な問題が沿線の7都県各地で浮き彫りになり、環境省も「環境破壊は枚挙にいとまがない」と根本的な見直しを求めていました。日本自然保護協会が「日本の環境行政史上に大きな汚点を残す」と国交相認可の即時撤回を求めたのは、当然です。
 JR東海は、リニア建設によって、新幹線が災害などで不通になったときの「バイパス」になるといいます。しかし、リニアそのものが巨大地震のリスクになりかねないものです。活断層を地下で貫くことの安全性は証明されていません。トンネル内で災害にあったとき最長4キロも徒歩で避難させるやり方に不安の声は消えません。
 東京や名古屋の地下深くに建設を計画する駅の防災・安全性も不確かです。首都直下地震や南海トラフ巨大地震で大きな被害が出ると想定される地域に「新たな幹線」を追加することが、なぜバイパスになるのか。「建設先にありき」の後知恵にしかみえません。
 安倍晋三政権はリニア計画を「成長戦略」に位置づけ、海外への売り込みをもくろみますが、見通しはありません。世界の高速鉄道で、日本のリニアが導入する「超電動磁気浮上方式」技術を使っているところは現在皆無です。かつてリニア導入を検討したドイツは、安全や費用など総合的に判断して撤退したといわれています。安倍政権が本来やるべきことは、リニア売り込みでなく、なぜ世界の国ぐにがリニアから手を引いたり、足踏みしたりしているかの徹底検証ではないでしょうか。
 JR東海が負担するとしている総事業費9兆円もきわめて大きな不安要因です。同社前社長すら「リニアではペイしない」といっているように経営の重荷になることは避けられません。国費による肩代わりや国民へのツケ回しのおそれも指摘されています。

「未来の悪夢」許さず

 現在の新幹線の約3倍の電力が必要なリニアは省エネルギー社会に逆行するものです。原発再稼働をあてこんでいるなら重大です。
 JR東海は国交相認可を得たことで年明けの工事開始をめざすとしていますが、国民の不安も疑問も消えないままの暴走は許されません。「夢の乗り物」どころか「未来の悪夢」になりかねないリニア計画を止めることが必要です。

2014年10月20日月曜日

リニア着工認可 期待と不安(岐阜新聞2014年10月18日)

夢スピードアップ、リニア着工認可 県内、期待と不安
2014年10月18日10:04
写真:夢スピードアップ、リニア着工認可 県内、期待と不安
リニア実験センターで公開された新型車両L0系=9月22日、山梨県都留市
 ついに着工認可が下りたリニア中央新幹線。試算によると、中津川市の岐阜県駅と東京・品川を最短34分で結ぶ。人の流れを大きく変え、県内の観光や産業面で大きなインパクトを与えると期待されている。一方、未曽有の大工事に対する不安も漂う。いよいよ本格化する巨大プロジェクトに、県内では期待と不安の声が入り交じる。
 県内の首長からは、JR東海に対して丁寧な事業推進を求める声が相次いだ。
 古田肇知事は「JR東海には環境影響評価(アセスメント)書に記載された内容や県が要望してきた事項に適切に対応してほしい」とのコメントを出した。中津川市の青山節児市長は「住民からは情報不足による不安の声が上がっている」と指摘。可児市の冨田成輝市長も「以前から言っている通り、地域住民並びに本市と十分に協議し、理解を得た上で進めてほしい」と求める。
 ただ、リニア自体への期待は高い。古田知事は昨年度末に策定した県リニア活用戦略を「地元自治体と連携して、着実に進めていく」と強調。県内全域へのリニア効果波及に意欲を見せる。
 経済界からも歓迎の声が上がる。リニア中央新幹線建設促進県経済団体協議会長を務める村瀬幸雄県商工会議所連合会長は「岐阜県を含む東海地域が首都圏と一体的な経済圏を形成すれば、県内への経済波及効果は極めて多大。新たなビジネスチャンスの創出や生産性の向上により、地域経済の活性化が図られる」とする。恵那商工会議所の山本好作会頭も「リニアの建設工事に絡んで、地元のさまざまな業界で仕事が増えることを期待している」と話す。
 一方、反対派は環境などへの影響を懸念する。住民らでつくる「東濃リニアを考える会」の原重雄代表は「騒音や日照権、環境など問題が山積している中、国会での十分な議論もないまま認可され遺憾。異議申し立てをするなど、今後も諦めず訴えていく」と話す。同会が所属する「リニアを考える県民ネットワーク」は25日に中津川市内で、弁護士を招いて用地買収などについての学習会を開く。

2014年10月18日土曜日

リニア着工認可 「一極集中の加速でなく」2014年10月18日 東京新聞

リニア着工認可 一極集中の加速でなく

 東京-名古屋を最速四十分で結ぶリニア中央新幹線は、社会を一変させる可能性を秘める。東京一極集中を加速させるのではなく、人口減少を見据え、地方の暮らしを守るインフラにしなければ。
 国土交通相が着工を認可し、リニア中央新幹線は基本計画決定から四十年余を経て、実現への大きな一歩を踏み出した。
 JR東海の計画では、まず、品川-名古屋を二〇二七年に開業させる。四五年に全線開業すれば、東京-大阪が一時間七分で結ばれることになる。
 政府は六月に閣議決定した成長戦略にリニアの早期整備・活用を盛り込んだ。三大都市圏の往来を活発にし、経済を活性化させようという考えである。
 経済界は、いわば世界一の巨大都市圏が形成され、国際競争力が増すことを期待している。各県に一つずつできるリニア駅の周辺では、早くも再開発の機運が盛り上がっている。
 大きな夢が語られる一方で、副作用への懸念も、また大きい。
 計画を審査した国土交通省の交通政策審議会は、一一年の答申の付帯意見で「さらなる東京一極集中を招く可能性」を指摘し、開業すれば活性化、という安易な発想を戒めている。
 日本の社会が人口減少に直面する中、人や企業が大都市に集中する動きをリニアが助長するのであれば、地方の疲弊に拍車をかけるだけだろう。
 何よりも心配なのは、これまでも指摘してきた通り、山河を貫く大工事が環境に与える悪影響である。沿線住民の不安や疑問は、日を追って大きくなっているように見える。JR東海は、沿線の人たちと真摯(しんし)な対話を重ねながら工事を進めなくてはならない。
 リニア中央新幹線は、今月開業五十年を迎えた東海道新幹線のバイパスとしての役割を持つ。
 計画段階では不要論も強かった東海道新幹線は、やがて高度経済成長を支える大動脈に育った。では、社会が成熟期を迎えた今、巨額を投じるリニア新幹線に、何を求めればよいのか。
 少子化の要因の一つが、出生率の低い大都市圏への人口流出。不均衡の是正は急務だ。であれば、リニアがもたらす移動時間短縮の恵みを一極集中の解消につなげたい。地方の暮らしを助けるインフラにできれば、新しい生活の姿、仕事の姿も見えてくるだろう。
 青信号はともったが、運転が難しいのは、これからである。
 

毎日新聞社説 リニア着工認可 「まだ議論の時間はある」2014年10月18日

社説:リニア着工認可 まだ議論の時間はある

毎日新聞 2014年10月18日 02時30分
 JR東海が品川−名古屋で2027年の開業を目指すリニア中央新幹線の工事に、国がゴーサインを出した。環境への影響、安全性や事業そのものの採算性など、大いに疑問を残したままの認可である。
 だが結局、国会で十分審議されることも国民的な議論が起きることもなく、申請から2カ月足らずで認可が下りた。残念であり、なぜ急がねばならないのかと、首をかしげざるを得ない。 国民的議論を経ず見切り発車となることのないよう、私たちは求めてきた。45年に予定される大阪までの延伸分も含めると総工費約9兆円という超巨大プロジェクトだ。JR東海が全額自己負担するというが、計画が狂えば国が支援に乗り出す可能性を排除できない。一民間企業による設備投資と片付けられない重大な国家的事業なのである。
 着工認可を受け、JR東海は沿線住民への説明会や用地買収に着手する予定だ。トンネル掘削で大量に発生する残土の処理をはじめ、環境や景観への影響を特に心配する沿線住民の理解を得ることは当然である。
 同時に国民全体への丁寧な説明も不可欠だ。まだ時間はある。国会はJR東海や認可を出した国土交通相に報告・説明を求め、環境、安全性、採算性など幅広い観点から議論を尽くす責任がある。
 確かに夢を感じる話である。線路の上を走る従来の鉄道とは全く異なる超電導技術が品川−新大阪を1時間あまりで結ぶ。国内の経済波及効果や海外への輸出チャンスにも期待が膨らむ。東海道新幹線も建設前は反対があったが、造ってみたら大成功だったと、50年前を引き合いに出す推進論もあるようだ。
 だが、スピードや大量輸送に絶対的価値があった時代ではもはやなくなろうとしている。国の経済も人口もこれから伸びようという当時と、高齢化、人口減少に向かっている今は大いに違う。
 特に需要を支えるビジネス利用客の世代の人口(生産年齢人口)が2050年には今より4割近く減少すると推計されているのに、JR東海の需要予測(新幹線とリニアの合計)は、25%程度増えるというものだ。航空機利用客の移入を見込むというが、通信技術の革新などにより、約30年後、出張の需要そのものが劇的に変化している可能性もある。
 南アルプス直下を貫くトンネル工事など技術的な難関、資材や労賃の上昇、金利負担の増加など、「想定外」の現実に直面することもあろう。場合によっては立ち止まる勇気も必要だ。とはいえ、何より先にまず十分な説明と議論である。国会の役割に期待したい。

朝日新聞社説 「リニア認可 拙速に進めるな」2014年10月18日

リニア認可―拙速に進めるな

2014年10月18日(土)付
 品川―名古屋間で27年の開業をめざすリニア中央新幹線の工事実施計画を、国土交通相が認可した。JR東海は年明けにも工事に入る構えだ。
 45年までに大阪へ延伸されれば、3大都市がほぼ1時間以内で行き来できるようになる。政財界を中心に、大きな経済効果を期待する声が強い一方、東京への一極集中をさらに加速する可能性も否定できない。
 私たちは、人口減少時代に入り、地方の衰退が深刻な今の日本にリニア中央新幹線を整備するのがふさわしいかどうか、主に国土政策の観点から国に慎重な判断を求めてきた。
 だが太田昭宏国交相はきのうの会見で「人の流れが大きく変わり、国民生活や経済活動にも強い影響を与える」と開業の意義を強調した。
 国の姿勢は一貫して「リニアありき」だったといわざるをえず、残念である。
 JR東海が、全線で9兆円を超す建設費を自己負担すると決め、長らく停滞していた中央新幹線計画がにわかに動き出したのは07年だった。
 東京や名古屋周辺の都市部では大深度地下トンネルを活用し、南アルプスは25キロのトンネルで貫くという壮大な事業だ。
 11年から始まった環境影響評価(アセスメント)では、全部で6千万立方メートルを超す建設残土や廃棄物をどう処理するかが大きな問題となった。大井川(静岡県)のような重要河川の水が減ったり、南アルプスの貴重な自然や景観に影響が出たりする恐れも指摘された。
 JR東海は、残土の搬入先の確保に一定のめどを示し、環境対策には万全を期すと強調した。だが、崩落の懸念から残土置き場の再考を求めた静岡県の要請を拒むなど、計画修正にはほとんど応じなかった。不安はいまも根強い。
 工事説明会や用地買収はこれから本格化する。国交相も認可にあたり、地元住民らに丁寧に説明し、理解と協力を得るよう、JRにくぎを刺した。肝に銘じてもらいたい。
 リニア中央新幹線は、140年を超す日本の鉄道史上でも空前の難工事となろう。
 東日本大震災後、国内の人件費や資材費は高騰している。工期が延びれば、ただでさえ巨額の建設費がさらに膨らむリスクがある。JR東海としてはなんとしても予定通りに開業させたいとの思いがあろう。
 ただ、工事はあくまで安全と環境保全を最優先に進めるべきだ。27年の開業という目標ばかりにこだわってはならない。

リニア工事認可に抗議 (日本共産党リニア問題プロジェクトチーム国会議員責任者穀田恵二)

穀田党議員団プロジェクトチーム責任者が談話

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 日本共産党国会議員団のリニア中央新幹線問題プロジェクトチームの穀田恵二責任者が17日に発表した談話「リニア中央新幹線工事実施計画認可に抗議する―環境問題を置き去りにしたままのJR東海の工事着工は許されない」は次のとおりです。

写真
(写真)記者会見する穀田恵二国対委員長(左)、辰巳孝太郎参院議員=17日、国会内
 一、太田国土交通大臣は、JR東海によるリニア中央新幹線工事実施計画を認可した。
 これは、大規模で深刻な環境破壊を引き起こすとの懸念を一顧だにしないものである。環境問題を置き去りにしたJR東海の工事実施計画を認可しないよう求める自治体・住民の声を無視するものであり、強く抗議する。
 JR東海の環境影響評価書補正版は、環境保全と住民への丁寧な説明を求めた大臣意見にさえもおよそ応えるものになっていない。また、「生活環境負荷低減策が具体的に示されるまで工事実施計画の認可をしないこと」(大鹿村村議会意見書)など、JR東海の不誠実な対応に対する不信と懸念が広がっている。こうした声に何ら答えることなく、認可をした国の責任は極めて重大といわねばならない。
 一、工事実施計画の認可と実際に工事に着工することは別である。JR東海は、工事着工を強行すべきではない。南アルプスを貫通するなど環境破壊を起こす工事を、住民や関係自治体との合意はおろか、まともな説明さえもしないまま強行することは許されない。
 JR東海には、「地方公共団体及び住民の理解」(国交大臣意見)を得る義務があり、誠意ある対応を行うべきである。工期を優先し工事着工を急ぐJR東海の方針に対して「懸念が払拭(ふっしょく)されるまで着工すべきでない」(田辺信宏静岡市長)など、沿線自治体から厳しい批判が相次いでいるのは当然である。
 国は、自治体・住民の不安に応えて、JR東海を厳しく指導・監督するべきである。
 一、今求められているのは、リニア中央新幹線建設そのものについての国民的議論である。
 日本共産党は、今後とも、リニア建設に伴う環境破壊その他の問題に不安を持つすべての自治体・住民の方々と力を合わせ奮闘する。

難問山積の長大トンネル リニア工事認可(中日新聞2014年10月17日 国交相)

難問山積の長大トンネル リニア工事認可 

2014/10/18 紙面から
南アルプスを貫く計画のリニア中央新幹線。難工事が予想される=6月2日、本社機「おおたか二世」から
 十七日に太田昭宏国土交通相が工事認可したリニア中央新幹線計画。東京・品川-名古屋間を四十分で結ぶ前例のない巨大プロジェクトが動きだす。ルートの九割近くがトンネルとなるだけに、リニアの工事は土との格闘だ。十三年後の開業を目指すJR東海にとって、大量の工事残土の処理や南アルプスの掘削といった難問が立ちはだかる。

■悩みの種

 「可能な限り早期に多量の建設残土の利用先を確保すること」。環境影響評価(環境アセスメント)をめぐり、太田国交相は七月、JR東海が提出した評価書に注文を付けた。
 リニア工事では、ナゴヤドーム三十三杯分の五千六百八十万立方メートルの残土が発生するとされる。自社だけでは処理できないほどの膨大な量。残土の活用先が決まらなければ、工事の遅れにつながりかねない。
 JR東海は沿線の都県を通じて地元に残土の受け入れを求めているが、昨秋の沿線住民への説明会では、活用方法について「調整中」との回答を繰り返した。当初の評価書でも、活用先を明記していたのは山梨、静岡県内の一部だけ。住民からは「説明が不十分」と不満の声が上がっていた。
 七月以降、岐阜、長野両県が、残土の受け入れ候補地をJR東海に提示。愛知県内では、窯業団体が採掘中の鉱山の埋め戻し用に受け入れを検討している。ここにきて残土活用に向けた動きが加速しつつある。
 国交省によると、めどが立っている候補地と、JR東海の活用分を合わせると、全量の三割弱。それとは別に各県から示された候補地は、現在、全量の八割に上る。
 ただ、候補地の多くでは、地権者の同意や受け入れ量の調整など協議が本格化するのはこれからだ。首都圏での残土処理も悩ましい。現在までに東京都から候補地の提示はない。JR東海の柘植康英(こうえい)社長は「首都圏は残土が出る他の事業もあり、難しい状況。先が見えていない」と話す。

■工事車両

 膨大な残土の量だけに、運び出す工事車両の数も桁違いだ。
 唯一の幹線道路に、残土の運搬車が一日最大で千七百台も走ると予測されている長野県大鹿村。村観光協会の平瀬長安(ながやす)会長(73)は「残土を運ぶトラックが通る県道は、高校生の通学や日々の買い物だけでなく、救急車も使う村の生命線。大量にトラックが走ることで、村民の生活が脅かされる」と不安をのぞかせる。
 運搬車が通る県道は急カーブが連続し、幅五メートルほどしかない場所も点在する。JR東海は道路拡幅などを行う方針だが、具体的な対策は明示されておらず、地元の懸念はぬぐえない。排ガスや騒音など環境への不安もある。村議会は九月十八日、国交相らに、地元住民の懸念が解消されるまで工事認可しないよう求める意見書を可決した。

■最大の壁

 掘ってみないと分からない。それがトンネル工事の難しさだ。
 最深千四百メートルの山中を二十五キロにわたって掘り進める南アルプスの掘削は、一番の難所とされる。長大で深いだけでなく、崩れやすい地質で大量の出水も予測される。南アルプスを迂回(うかい)するルートも検討されたが、今の施工技術で対応可能として最短区間で工費の安い現ルートが選ばれた。
 一九八二年に開業した上越新幹線は、トンネル工事に泣かされている。群馬、新潟県境を貫く大清水トンネル(長さ二十二キロ、最深千三百メートル)の掘削では、わき水があふれたり、巨大な岩石がはがれ落ちたりして何度も工事が中断。開業が五年遅れ、総工費は三・五倍に膨れた。
 南アルプスでは、今もJR東海がボーリング調査を続けている。着工となれば、本坑を掘る前に、試験的に近くに穴を開けて地中の状態を確認しながら工事を進めるという。JR東海の担当者は「難工事ではあるが、工事の技術も進歩している。工期通り仕上げられる」と説明する。

 (リニア取材班)

2014年10月14日火曜日

次世代に残すべき可児の自然(平成26年第2回定例市議会) 小川富貴市議の質問と回答

質問

17番(小川富貴君) 17番議員、みどりの風、小川富貴でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は2項目、ともに可児市の本当にすばらしい地域資源、1点目はその保全、そして2点目はその活用というところで、2項目の質問をさせていただき、執行部の方と議論をさせていただきたいというふうに思っております。
 先ほど来、Kルートの話が出ております。私は、KYルートを毎日散歩しています。KYルートと申しますと可児の山(KYルート)でございます。可児の山から私のルートをぽっと出たところが奥磯林道でございます。今、その奥磯林道で直径20センチメートルもあるような大きなレンズをつけたカメラを持った人たちが、多いときには10人ぐらい1カ所に集まって、その瞬間を狙っていらっしゃる方たちがお見えになります。常にこのごろはいらっしゃいます。非常に貴重な珍しい鳥がそこで営巣しているということで、一瞬のシャッターチャンスを狙っていらっしゃるようでございます。
 今回、私が質問に出します場所も、その時期になりますと何人ものカメラを携えた方が、日がな、多分一日中いらっしゃる方もお見えになると思います。その瞬間を何とか捉えようとする人たちがお見えになります。
 それはさておいて、最初に戻りまして、今非常に珍しいと言われる鳥を見ている人たちと挨拶を交わして、私は浅間山のほうを通って、また散歩を進めるわけですけれど、以前この道、私はもう二、三十年前からこの道をずうっと通っているんですけど、ほとんど人に会うことはありませんでした。もし、たまに人に会うというなら、たもを持った人でした。この地域もやはり、その時期になりますとギフチョウが舞います。多分そういったものをとっていらっしゃるんだろうというふうに思いましたけれど、ところが、今はアフターリタイアメントの人々が本当に多く、浅間山のあの付近を歩いていらっしゃいますので、今はたもを持ったような人に出会うことはほとんどなくなりました。これは本当にうれしいことです。衆人環視ということが、大切なものを守るときに本当に必要なことなんだなということを実感するところでございます。
 そういうところで、最初の質問に入らせていただきます。
 次世代に残す可児の自然というタイトルをつけました。趣旨を読ませていただきます。
 可児市東部の湿地には、市指定のミカワバイケイソウ、シデコブシを初め、ショウジョウバカマ、ハルリンドウ、ササユリ、それにヒカゲツツジ、そしてカタクリの群生を見ることができるわけです。また、このカタクリの群生が一斉に花をつけますときには、ギフチョウがこの上を舞っています。非常に貴重な自然、これらの自然を次世代に残すための施策を問わせていただきます。
 まず、最初に御紹介したいところでございます。もうそんなことは、みんな知っているというふうにおっしゃると思いますけれど、確認のために御紹介させていただきます。今申し上げましたミカワバイケイソウ、これは文化財課が出してくださっている本でございます。この中にミカワバイケイソウ、このように書かれています。
 地質代の氷河期に寒冷地から移動して生育していたが、現在のように暖かくなってきて、動物のように寒いところへ戻ることができず、その地に適応場所を見つけ、今日まで生きてきた、いわば氷河時代の生き残りともいうべき貴重な植物であると記入してくださっています。これは、ちなみに市の指定の天然記念物にしてくださっています。
 そして、シデコブシでございます。中生代の終わりごろあらわれたグループで、最も原始的な花のつくりをしている。約500万年から300万年前の地層から化石となって発見されているため、生きている化石、自然の歴史の証人でもあるというふうに書かれています。200万年前にミッシングリングを抜けて人間ができたと言われます。その2倍以上も前からこの地に生き続けている歴史の証人というふうなシデコブシがございます。
 そういった貴重な可児市の自然を守るために、可児市では条例を制定してくださっています。4条の中には、そういったものを総合的、計画的に保全するための施策を実施する責務がある、ないしは積極的に取り組まなければならないということを条例でうたってくださっています。また、そういったものの確保に関する条例にも、こういったものが書き込まれています。そして、この条例の意思を生かした形で、可児市環境基本計画というものを可児市は出してくださっています。その中の1番目に、「可児市の身近な自然を次世代まで残します」、これ、きのういただいたんですけど、全く私が今回通告したタイトルと同じようなデクレアになりました。本当にすばらしい文言がうたわれています。少々中身を紹介させていただきます。
 本市の自然環境の特徴として、里地里山と言われる昔から人の手が加えられ、維持されてきた二次的な自然が身近にあります。この里地里山や河川、ため池などは、生物の重要な生息・生育空間ともなっており、天然記念物などに指定される貴重で特徴的な動植物も多数生息・生育しています。少し飛びます。貴重な動植物の保護・保全活動も積極的に行われていますが、民有地内に育成地がある場合が多く、山林所有者との調整等が必要となっていますということが書かれています。こういった現況を把握した上で、課題が4つほど上げられていますが、今回私の質問に関連するところの3つを御紹介させていただきます。
 貴重な動植物の生育・生息地の保護、保全や、本市の生物多様性の保全を図る必要があります。
 2番目です。可児の自然をあらわす特徴的な環境である里地里山については、持続可能なライフスタイルの一端を担うだけでなく、生物多様性の面からも貴重な地域資源として、里地里山の保全を図っていく必要があります。
 3番目です。無秩序な開発の抑制による自然環境を考慮した土地利用の推進を図っていく必要があります。こう書いてくださっています。
 そして、守るべき対象、これを重要な地域資源として6つ上げてくださっています。鳩吹山、木曽川、可児川、そしてあと3つ、これは具体的な植物の固有名詞が書かれています。カタクリの群生、ミカワバイケイソウ、そしてシデコブシです。今回、私が上げる全ての植物がこの中に含まれているということを、まず冒頭に御紹介申し上げました。
 そこで、質問でございます。
 お手元に、議員の方、執行部の方に資料をお配りしています。最初が地図になっています。地図と写真、それで地図の裏面は質問2に使うものでございますので、最初はこの地図と赤土が出た写真をごらんいただきたいというふうに思います。
 質問です。ミカワバイケイソウ群生地の上流域近くが、現在開発されています。
 ちょっと質問を途中でとめます。
 これが今開発中、お写真でごらんいただけるところのものであるというふうに思います。これが開発で、山を掘った後で赤土になっていますけど、その奥の緑のところ、これが今申し上げましたミカワバイケイソウ、ショウジョウバカマ、シデコブシ、カタクリ、こういったものが繁茂している貴重な里山でございます。そして、この緑の山の向こう側が柿下地域になります。
 それをわかりやすく地図でごらんいただこうというふうに思います。
 この赤で囲った部分が、今赤土が出ていた開発地域です。そして、太い黒い線があると思います。これが皐ケ丘9丁目と桂ケ丘を結ぶ赤道、この山全体の分水嶺になっています。一番高いところで、この分水嶺からこちら側、広い側は、水が柿下側に流れ、この分水嶺から、こちらは大森のほうに水が流れる地形になっています。
 そして、オレンジ色で示したものが、ミカワバイケイソウの生育地です。ほとんどのミカワバイケイソウ、およそ9割がこちら側に集中しています。そして、1割がこちらにあるという、数的にはおおよそそういう数、ことしの数えていただいたものの総合をしても、大体そんなものではなかろうかと思っています。
 それで緑色で示した場所、ここがカタクリ、少し下流にミカワバイケイソウがありますけれど、その100メートルも離れていないと思いますけれども、カタクリが群生し、シデコブシが咲き、ギフチョウが舞う森です。この一帯、ヒメカンアオイですとかカンアオイがありますので、この一帯にギフチョウが舞います。
 それで見ていただきたいのは、この黒い線の上に細い黒い線が載せてあります。開発区域、今赤い囲いがしてありますけれども、この開発業者の方がこの土地も一緒に取得をされましたので、この開発がもしこちらに進むようなことがあれば、ごらんになっておわかりいただけると思います。ミカワバイケイソウ、これ一の沢、千四百何本、一番ミカワバイケイソウが今生えている場所ですけれど、その水源地は実にこの分水嶺、この赤道のすぐ下が谷のようになっていて、ここで水を集めて、その水が今ミカワバイケイソウを養っています。二の沢、カタクリが咲いているところも同様です。この稜線のすぐ下がおわんのように沢になっていまして、その沢から流れ出る水が集まって、ここのミカワバイケイソウの生育を助けているわけでございます。もし、この開発がこちらに進んでくるというようなことがあれば、確実にこの水源を断つということは、この図を見ていただければおわかりになるところではなかろうかと思います。非常にこれに私は心を痛めているところでございます。私だけではなく、これを見た方が、やはり皆さん心配していらっしゃるところです。
 そして、今回この質問をするために、確認のためにリニア新幹線の進路図をいただきに参りました。この点々で示してあるのが、リニア新幹線の進路図です。この二の沢の一番の水源地のところをまさしく通過しているようでございます。これも今回やることを決めて、それでその後に地図をもらいに行って、載せてみて、ああこういうことだったんだということに、初めて私自身は気づいたところですが、多分もう執行部の方はこういったことを把握されて、何らかの手だてを打ってくださっているもんだというふうに思います。ミカワバイケイソウは、市の天然記念物に指定されているものでございます。
 ここで、質問を続けさせていただきます。今後のミカワバイケイソウの保護をどのように進められるのかをお伺いいたします。
 2点目の質問でございます。
 ミカワバイケイソウ群生地近くにある、今も地図で御紹介いたしましたカタクリの群生場所には、頭上にシデコブシが広がり、カタクリの花が一面に咲くころには、カンアオイから育ったギフチョウが舞う、本当に美しい姿を見ることができます。ところが、ことしはそれらの場所を倒木が覆い、保全が危惧されているところでございます。
 お配りした資料の地図の裏をごらんください。
 現況がこういった状況でございます。こういった状況で倒木が覆っています。それだけではなく、低木というのか、土の上にいろんな低木が生え始めているような状況でございます。これも違った角度から見たものですけれども、全体をこういう形で、ミカワバイケイソウの二の沢の上流ですけれども、こういった形になっています。本来なら、カタクリが繁茂する場所ですから、これは議会だよりの表紙を飾ったカタクリでございますけれども、本来ならこんな形が一番ふさわしいいい形なわけです。そして、こんなふうになる前は、こういうカタクリの上にギフチョウが舞う姿が見られる場所でございます。それが今こういう状況がなっているのが実態でございます。
 ギフチョウが絶えていくということが言われています。今ギフチョウは春の女神、あるいは自然保護キャンペーンのモデルのような形で、各地でいろんな自然保護の取り組みのキャンペーンとして使われておりますけれども、このギフチョウが減っていく大きな理由が2つございます。いわゆる森の地面が荒れるということ、そうするとカンアオイ、卵はカンアオイの裏に産みつけられますから、それでカンアオイを食べて幼虫が成長します。成虫になった後は、このカタクリの蜜を吸って生きていきます。ですから、こういう状況であっては、カンアオイが育つことも、蜜を吸うカタクリが生えることも非常に難しい状況になっているというふうに皆さん心配しておみえになります。
 私はここへ毎年行っています。いろんな観光地も行ったつもりでございます、それは世界も含めて。でも、この場所というのは、どんな観光地にも引けをとらない非常に重層的な価値の高い本物の存在する、非常に大切な場所であるというふうに私は思っています。小・中学校で挨拶をさせていただく機会が議員ですからございます。そんな折、子供たちに対して、こういったすばらしい自然があなたたちのすぐ近くに息づいている、そういったところで皆さんは育っていますというようなことをお話をさせていただくことがございます。
 質問の続きを読ませていただきます。
 持続可能な保全を目指して、有用な地域資源として何とか生かしていくことができないのかをお尋ねさせていただきます。

市の回答

教育委員会事務局長(高木美和君) それでは、1番目のミカワバイケイソウ群生地の保護を今後どのように進めていくかについて、まずお答えしたいと思います。
 市は、平成7年に市内柿下地内のミカワバイケイソウ自生地1カ所、1万782平米を地権者に御理解をいただき、天然記念物に指定しております。これは、ミカワバイケイソウが東海地方の固有種であり、市内では最も自生する数が多い場所という理由によります。市はこの自生地を保護するために、次のような対策を行ってきました。
 1つ目は、採取禁止の注意看板の設置です。
 2つ目は、5月の開花時期などにパトロールを兼ねて状況調査を行っていること。この際には、文化財審議会委員等の有識者も同行していただいております。このときには、アドバイス等をいただいております。
 3つ目は、指定地や周囲の状況変化に係る情報への対応です。水流に支障のあるものの除去などを行っています。
 また、この自生地は天然記念物指定地ですので、当然のことながら、現況変更の行為は制限しております。
 このような中、この自生地における生育状況は良好に保たれ、ことし5月7日の調査におきましても、1,431本の生育を確認し、そのうち86本が開花しました。ここ数年を見ましても生育本数に問題はございません。今後とも専門家の意見をお聞きしながら、極力現状の生育環境を保ちつつ、有効な保護策を行ってまいります。
 また、議員御指摘の上流域近くの開発区域についてですが、この流下経路は、ミカワバイケイソウ自生地の沢とは、尾根を挟んで西側の谷へ向かうものであり、開発による自生地の影響はほとんどないと考えております。この自生地や他の湿地の保全については、開発に先立って、教育委員会や環境課から湿地や希少種の保護、保全をとるよう意見を出し、事業者の取り組みを促しております。今後も文化財指定地や希少種の自生に影響を及ぼす可能性のある開発等については、事前協議の中で指導してまいります。
 2つ目の、ミカワバイケイソウ群生地の近くにあるカタクリやシデコブシの群生地の保全や、地域資源として生かすことについてにお答えします。
 議員御指摘の場所は、ミカワバイケイソウ自生地の東側に位置する、通称神田洞奥ため池のある谷のことと理解いたします。この谷には、カタクリやシデコブシなどの希少種が自生していることは、研究者や環境課との調査で承知しておりますが、現時点では、開発の計画はなく、大きな生息環境の変化もないと思っております。希少種の自生に影響を及ぼす可能性のある開発等については、可児市市民参画と協働のまちづくり条例に基づき、事前協議の中で指導してまいります。議員が言われる持続可能な保全を目指すには、環境を大きく変えないことが前提であり、余り人が立ち入っていない場所においては、調査等による最小限の立ち入りにとどめることも大切だと考えております。
 また、有用な地域資源として生かすことについては、この持続可能な保全が可能であることを前提とする必要があると考えます。一般に公開されている湿地などは、人が近寄りやすく、もともと開けている場所が多いと思います。しかし、この場所については、人が近寄りやすい場所には思えません。また、この一帯は全てが民有地であることも注意が必要でございます。現状では、地域資源として生かすことよりも、保全を優先して考えていきたいと思っております。以上でございます。

2014年10月13日月曜日

トンネル残土からのカドミュムなどの重金属汚染事件(2003年久々利川水系新滝が洞ため池)

水源のため池のカドミュム等重金属汚染事件(2003年4月26日)についての可児市市民団体「水源汚染問題ネットワーク・可児」の報告「水源汚染と闘って4年・可児市から」転載したもので、可児市久々利大萱地区は、過去に久々利川が、カドミュムなどの重金属に汚染され、その原因が東海環状線のトンネル工事残土が、上流のゴルフ場に放置され、下流にある農業用ため池を汚染したことだった。可児市の市民団体がそれから4年、さまざまな運動を展開した報告をブログに掲載した。(2007年2月6日)今、リニアのルートが再び久々利大萱地区を地上橋で通過する計画が一方的に発表され、地上橋部分からリニアの膨大なトンネル残土が排出され、場所は明らかにされないが、付近に置き場が作られる。この事件の記憶がまだ残っている久々利大萱地区の住民からは反対の声が強くわき上がっている。
記録に残すためにこのブログに掲載する。

水源汚染と闘って4年・可児市から2007/02/06


法面と処理プラント

新滝が洞池

ストックヤード工事看板

ストックヤード

水処理施設

法面


 岐阜県・可児市の市民団体「水源汚染問題ネットワーク・可児」(代表:梅田裕孝氏)が国交省に可児市公共残土ストックヤードからの排出水の対策を求めてまもなく4年になる。1月20日に可児市で集会を開いた同会は、提訴をも視野に入れた活動を引き続き今後も、粘り強く実施することを確認した。
    
 ことの発端は2003年4月26日。久々利川水系・新滝が洞溜池で約1000匹の魚が死ぬ事件が起きたこと。岐阜県環境課、可児市環境課などの調査の結果、上流に設置された東海環状自動車道路建設残土ストックヤードから、強度な硫酸酸性でカドミウムなどの有害重金属を含む排出水が久々利川に流出していたことが判明した。

 可児市周辺に分布する美濃帯と呼ばれる地層が掘り起こされ、黄鉄鉱などの硫化鉱物と、酸素を含んだ雨水や地下水が化学反応を起こし硫酸が生成された。その硫酸がカドミウムや亜鉛など重金属類を溶かし、排出水となってストックヤードから新滝が洞溜池へ流入したのだった。

 上記ストックヤードは可児市が借地して建設した施設で、国交省直轄事業の道路建設で発生した残土を2000年9月から2003年4月までに88.7万立方米搬入していた。また可児市は国交省多治見工事事務所長と、残土1トンあたり1170円を可児市に支払うと覚え書きを交わし、予定通り95万トンが搬入されれば11億1150万円となる事業だった。

 ストックヤードは残土の仮置き場のため地元住民への説明会は開かれたが、残土の搬入時等の交通事情に関する説明が主で、住民は誰もが残土の仮置き場だと思っていた。名称は「可児市公共残土ストックヤード」であるが、実際に残土を外へ運び出すことはなかった。実態は可児市市議会で追及を受けた建設水道部長が「ストックヤードと英語で言った方が体裁がよいと思っただけで、実質は埋め立て処分場だった」と答弁しているように埋め立て用地だった。

 1973年に愛知県犬山市で同様の汚染事件が起きている。汚染水が周辺の水田へ流入し産米からカドミウムが基準値を超えて検出された。汚染地域指定を受け約10億円の国費で耕作土の入れ替えが実施された。その後、指定を解除されたが行政の監視調査が現在も続いている。

 可児市のケースで国交省は重金属対応処理プラントを設置したが、ストックヤード各部からの排水の多くがpH3~5の酸性を示し重金属類を含有している。プラントでの処理水は調整池下流に放流されている。

 国交省はストックヤード天端部を全面覆土する工事を行ったが、水量は減ったものの酸性水の浸出は止まっていない。依然として降雨時の後には、pH4程度の酸性水が浸出している。さらには、地震や大規模な風水害でストックヤードが崩落する可能性もあると言われている。

 現在、人体に有害なカドミウム、鉛、銅、亜鉛など有害重金属類は重金属対応処理プラントで消石灰、希塩酸を用いて処理を行なっているが、地元の農家はこのような処理水を使って米作りをしたくないと言っている。また、将来的に生態系に影響を与えるのではないかと懸念される。

 地下水を水道水源とする大萱地区住民は、底部に遮水工が施されていないストックヤードからの酸性浸出水による地下水の汚染を恐れている。国土交通省はストックヤード底部には固い岩盤があるから地下浸透はしないとしているが、その岩盤にひび割れがないという保証はない。

 以上の理由などから同会は汚染残土の全面撤去と水源汚染水への対策を求めて岐阜県公害調停委員会に調停を申請した。調停において、久々利川水系の水を元の状態に回復させ、監視や点検を必要とする処理プラント施設が河川上流に存在しない、地震や風水害によるストックヤードの決壊、崩壊を憂慮せずに済む状態に戻すことを求めた。

 しかし06年10月27日岐阜県公害審査会は、現地調査をする事もなく、「合意成立の見込みがない」と調停打ち切り通知を突然出してきた。肩透かしの対応のまま汚染水の滲出は止まらず、住民の不安や不信、怒りと憤りは募るばかりで、暮らしより産業優先、住民より企業保護という行政の姿勢が露骨に現れているとして、同会は強く抗議すると同時に、2月1日に事務局会議を開き、これまで通り、週1回程度の調査・監視活動を実施するとともに、水源の原状復帰を要求し続けることを決めた。

(上野数馬)

2014年10月7日火曜日

リニア地上走行被害から住民の防護を(可児市議会での質問と回答)

平成26年第2回市議会定例会第3日で、共産党伊藤健二市議の リニアに関する質問と、冨田市長及び市の担当部局の回答があり、その議事録が可児市議会のブログに掲載されているので、紹介します。 (一部省略あり)
今後、他の市議のリニア関する市議会での質問と市当局の回答を順次紹介して行きます。

18番(伊藤健二君) 18番、日本共産党可児市議団の伊藤健二でございます。
 きょうは、大きく2点について質問をさせていただきます。
 第1問は、リニア地上走行被害から住民の防護をと題しまして、市長及び担当部長に質問をいたします。
 まず最初に、市長に答弁を願いたいと思います。
 岐阜県知事は、環境影響評価書に意見を出す際、可児市の意見を軽視してリニア建設ありきで事を推進しました。これを受けJR東海は、わずか1カ月という異例の速さで環境影響評価書を提出、この秋の建設着工に向け、国の認可を取りつけようとしています。
 可児市長が3月の記者会見で、建設ルートの地下化を今後求めないとしたことは、市民と市議会に絶望感を与え、可児市のトップが腰砕けを起こしたのかと映ったと思います。市長態度の豹変に、市民の納得が得られる説明も、また区間地上走行が必要な理由も、いまだ明らかではないと思います。岐阜県知事意見を尊重するからと目をつぶるというのは、私は通らない話だと思います。賛同決議を上げ、関係自治体や県内地方議会に市議会の決議への理解と、また応援を求めてきた可児市議会としましては、可児市の沈黙がやむを得ない市長の決断だったとは到底認められないものだと思います。JR東海側の高圧的な姿勢に変わりはありません。環境大臣の意見書も意見も出た今日、市との協議をして残土管理計画をつくれと、環境大臣の意見書にも出てまいります。
今後、可児市が何を考え、JR東海側に何を求めていくか、極めて重要な時期に差しかかっていると考えます。ですからこそ、こうしたJR東海側の高圧力に屈したままではいけません。可児市民の地区住民の命や、健康、平穏な生活と暮らしを守ることができると市長は考えているのでしょうか。まず最初にこの問題で、市長の政治姿勢と考えについてお伺いをします。
 質問の大きな1点目は、市長は何をもって地下化はできないと認めたのでしょうか。
 もう1点は、市長は、地上走行ルートでなければならないとJR東海が説明をしたはずでありますが、その理由を何と理解したか、どのようなものと理解をしたのでしょうか。
 そして3つ目には、地上走行では住民の生活環境と、また文化財、景観の両面で大変深刻な被害が増すことになると予想されています。これを承知で地下化の旗をおろしてしまったのか。
 以上3点について、市長自身から御説明をいただきたいと考えます。
 私は、市長がぜひ頭をもたげて、こうした難題にも立ち向かっていただきたいと、こういう立場から質問をさせていただきます。
 大きな2つ目の問題に具体的に入りたいと思います。
 特に今、問題にしなきゃいけないことは、リニア建設に賛成か反対か、こうした立場の違いにもかかわらず、今ある住民の疑問や不安に答えないままで建設着工を進めるようなことは断じて許されるものではないということであります。ですからこそ、可児市がJR東海の広報官、伝令役に終わることなく、住民の命と暮らしを守る基礎自治体として、疑問や不安、要望に真摯に答えさせ、またJR東海にそれを求めていくということが重要であります。市担当者は、今後、これらの多難な諸課題にどう向き合い、住民のために総合窓口、情報開示の任務を行うつもりでしょうか。
これから8つの問題について、具体的に市の認識や対策をただしたいと思います。これは山梨リニア実験線など、JR東海の環境影響評価書の諸資料から、あるいはいろいろと見聞きした問題点などを指摘して、1)から8項目について具体的に質問をさせていただきます。
 この諸問題の大きい2番目のまず最初は、建設残土問題についてであります。
 建設工事に伴う残土処理の計画が、約2割程度しか示されておりません。計画では6,500万立方メートル、そのうちの5,600万立方メートルぐらいになるようでありますが、この東京ドーム50個分を超える量の排出土、残土のうち、岐阜県内で排出する量が約1,280万立方メートルと言われています。また、大萱、柿田、大森の排出口等では、数百万立方メートルにも及ぶと聞いています。この莫大な量の排出が計画されているわけであります。しかも、この東海環状自動車道のトンネル掘削残土の倍にもなる量の残土には、1つには酸性水土壌、美濃帯が含まれている可能性、また御嵩方面に対してはウラン鉱床をくりぬく危険もあると指摘されています。この有害鉱物、そして問題の土壌を運搬、貯蔵、最終処分する対応策が我々の前には明らかにされていない状態であります。準備書までで、あるいは意見書で明らかにされたのは、静岡の7カ所の残土処分場が指定されているという程度であります。岐阜県では明らかにされていません。JR東海は、ウラン鉱床の問題でいえば、放射線線量計をつけて掘削、トンネル掘りをすると説明会では説明をしたと聞いておりますが、出てきたものをどう対処するのか、最終処分、ウランは放射線管理対象でありますので、そうした問題についても重要であります。
そこで、具体的にお尋ねをします。
 1)として、残土処理計画を明確にさせ、またその内容に基づいて環境影響評価をやり直すように求める考えは可児市にありますか。
 2)として、JR東海では、建設発生土は排出口から5キロメートル圏内に仮置きすることがこれまで多く経験済みであります。周辺住民の納得と合意を得て建設工事計画を立てさせる点に、変わりはないでしょうか。
 3つ目として、開口部、非常口からの土砂の運搬が計画をされ、最大1日合計で700台ものトラックの走行が予想されます。大気質、粉じんや騒音、振動による悪影響や通学路における事故の危険性、また重量貨物走行による道路の損傷など、住民や地域自治体への被害が予測されます。トラックの走行台数の総量及び走行時間規制を行うこと、また具体的に被害が出るようであれば、被害補償のあり方を事前に決めておくことが必要だと思いますし、こうしたことが関係住民の合意がないまま工事を着工しないということが明確にされることが重要だと思いますが、市はこの点、どうお考えでしょうか、お尋ねをします。これが3)であります。
 大きな2つ目、最初は建設残土問題でしたが、2番目には地下水脈、湧き水湿地についてただしたいということであります。
 工事ルートの地下水脈の状況を事前に調査し、水源への影響を予測して回避する措置をJR東海に確実にとらせるよう要求することが必要であると考えます。昨日、この市議会でも小川議員が指摘をされましたが、久々利柿下の神田洞上ため池の先にあります二の沢水源地の真下をリニア中央新幹線のルートが通過するということは、昨日の小川議員の発言でも明らかにされておりました。そこでは回答はいただけませんでしたが、地下水脈がこうしたルートを通ることによって影響を受け、結果として、二の沢の希少種であるミカワバイケイソウやシデコブシ、あるいはカタクリなどに影響を与えていく。これは、自動的にすぐ水がかれるというものではありません。さまざまな地下水脈、わからないからこそ影響を与えないような対策が一つ一つとられていくことが必要であります。しかし、リニア中央新幹線のルートはもう決めたから、ここを次から次へと掘っていくぞということでやられようとしています。そういうJR東海の建設工事先にありきのような対応が問題だと考えます。

 今、山梨のリニア実験線では川がかれたり、地下水脈に穴をあけるような例が生じており、こういったことを踏まえて、河川、ため池、水源域への対策をどうするのか、可児市としての考え方、その点、可児市の方針を明示していただくようお願いをしたいと思います。
 ちょっとここで説明を申し上げますが、こちらに写真を用意しました。本当はここにパネルがあって、皆さんに明快、くっきりと今回は出すつもりでおったわけですが、残念ながらそれが間に合いませんでしたので、見にくい汚い写真で失礼ですが、執行部側と議員のほうにも見えるようにしました。
 上の2つの写真は、山梨県の笛吹市にあります天川と金川、そこで向かって右手側が、かれてしまった川の様子、もう石がごろごろと出ています。その隣が、建設されたリニア実験線の柱が立っていますが、その真下に日量で1万八千四百四十何トンと説明を受けましたけど、1日の排出量で1万8,000トンを超える水、山の地下水が放出されています。今も出続けているということであります。このように、全くJR東海側も予期せずにどんと穴があいてしまって、地下水脈に穴があく、それがその例であります。
 こうしたことが、この可児市の地下で起きないという保証はありません。そうした点で、河川、ため池、水源域への対策をどうしていくのか、どう自然環境を守るのかという点で、4)番目としてお尋ねをいたします。

 次に、第3に電磁波の人体への影響の問題について取り上げたいということであります。
電磁波の影響については、環境影響評価書は、国の基準として定められたICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)のガイドラインを下回っており、磁界の影響については問題ないとしているところであります。このICNIRPのガイドラインは、電磁波の熱効果しか考慮しておらず、慢性影響や非熱効果などが考慮されておりません。こうした中で日本弁護士連合会は、2012年9月13日に電磁波問題に関する意見書を発表しまして、電磁波に関する安全対策のために、予防原則に基づいて、幼稚園、保育園、学校、病院等が存在する地域をセンシティブエリアと指定して、極めて敏感な地域性ということを指摘して、他の地域よりも厳しい基準を設けることを検討すべきであると提言いたしました。
 ここでいう予防原則とは、どういうことでしょうか。2010年11月に条約発効しておりますが、ISO26000の中で、社会的責任ガイドラインといいまして、きちっと社会的に明らかにすべきことだということで発効しております。この中では、放射線も、電磁波も、その対象になるということで、予防原則が貫かれるべきだということであります。
 では、その予防原則とは何かということで改めて説明をしますと、その危険性が十分に証明されていなくても、引き起こされる結果が取り返しがつかなくなる場合に予防的措置として対応する考え方であります。これが予防原則であります。だから、結果が悪ければ、悪い結果をつくらないように回避させる、予防的措置をとっていくということが大事なんだという考え方ですが、残念ながら日本では、この弁護士連合会が指摘するように、国民一般に対しても確立しておりませんし、もっと大事な子供たち、将来の日本を支えていく子供たち等に対するより厳しい基準を設けることについては、まだまだ実現していないということであります。
 ちなみに、フランスでは憲法に、2005年3月に、この予防原則の考え方を取り入れました。また、ヨーロッパのEU委員会では2000年2月に、環境問題は原則的に予防原則が基本となるということを決定、決議をしています。
 こうしたことについて、まだまだ日本は大変甘いわけでありますが、この電磁波の影響について、予防原則の立場に立って改めて調査をし、特に地上走行部分においては、大萱のことでありますが、人体への影響を極力回避する措置をとるべきだと考えるわけでありますが、市としてこの問題にどのような見解をお持ちですか、お尋ねをします。
もう1つ、電磁波(磁界)の問題、その磁界の強度と健康についてということで、もう1項目、質問をさせていただきます。
 JR東海は、この国際非電離放射線防護委員会、放射線を扱う諸団体、企業の連合組織でありますが、この防護委員会のガイドラインに基づき基準値を定めて安全対策に万全を期しているとしております。しかし、欧米では、防護委員会が定めたガイドライン以下の値を基準としている国や自治体も多数あり、日本でも0.4マイクロテスラ ── これは磁界強度の単位でありますが ── を超える磁界強度になると、小児白血病や小児脳腫瘍が急増するとした論文もございます。山梨のリニア実験線に当てはめると、200メートル以上離れないと磁界強度は0.4マイクロテスラ以下にはならず、200メートル圏内にある教育、あるいは小児の関係施設などへの影響が不安視されています。
 中津川に今度できる岐阜県駅の近くに、坂本小学校がございます。あそこは80メートルちょっとだそうです。こういう問題がありますので、200メートル以上離れないと、少し危ないんじゃないという意見があるわけですが、坂本小学校を一体どうするんだと、旧坂本村の子供たちが全部その小学校に来る。そこへ1時間に5本、上下でいきますと10本ですよね、五、六分に1本ずつ、時速500キロで通過する。そのうち1本は多分とまるでしょうという話ですが、ともあれ、強い磁界のもとに定期的に繰り返し繰り返しさらされるという問題があります。
 これは専門的過ぎて、私らにはわかりかねる問題もありますが、具体的には、近い距離で起きる問題という観点で見れば、荒川豊蔵資料館の来訪者、そこで対応している職員の皆さん、それから地上走行部の住民、それから電磁波被曝をするという危険をどうするかという問題ではないんでしょうか。また、電磁波はコンクリートや土を通してきてしまいますので、鉄鋼で囲むかなんかしないと、なかなか効果的な防護壁にはならないということでありまして、放射線とは違って、電磁波の問題については独自の大変さがあるというふうに指摘をされています。
 桜ケ丘リニア問題を考える会の住民の皆さんは、88メートル先をリニア中央新幹線の地下トンネルが通過するけど大丈夫かという問題意識を持たれて、そうしたことを市長等に意見書として上げた経過が昨年の12月にはございます。そうしたさまざまな市民の間に不安を広げているというのが、この電磁波の問題ではないでしょうか。
そこで改めてお尋ねするのは、健康への影響や動植物の育成について、第三者機関による安全性の再検討を行い、その結果を公表させるとともに、可児市が科学的な知見を持つことについてどのように考えておられるか、お示しいただきたいと思います。
 この具体的問題の4つ目であります。
 4つ目は、微気圧波、トンネルから出る騒音についてということであります。
 これは、山梨のリニア実験線の写真で、これも見にくくて申しわけありません。遠くからもわかると思いますが、ここに白い線が出ていますが、これはトンネルへ入っていくための高架橋の部分です。その先にぽこっと、かまぼこ状態の構造物がありますが、これがトンネルのフードということでございます。微気圧波というのは、トンネルから出てくる騒音のことであります。この問題について、お手元に資料を、けさ配らせていただきました。微気圧波、トンネルから出る騒音についての換算表であります。
 準備書の予測では、中津川市等では計5カ所でジェットエンジンの爆音の約2倍の音となる微気圧波が響き渡るおそれがあり、こうした問題は、久々利地区の大萱でも同様の危険が予測されます。また、非常口の出口となっている大森の換気口及び空気抜きの穴からも同様に、列車が下を通過すれば微気圧波が出て、大変な影響が出るという状況が心配されます。周りは山で囲まれており、こだま現象も懸念される上、諸施設もあり、緩衝工の設置などによってどこまで騒音が軽減されるかも不安視されています。
 この緩衝工、衝撃波を抑えるため、和らげるために緩衝工事を行って騒音を低減させるというふうにJR東海は説明しています。低減させた結果、出てくる音のレベルがどうかということが、先般、秋田大学名誉教授の庄司善哉先生が、JR東海の環境保全事務所、竹下俊輔所長さんのほうへ質問書を送り、聞いた結果として確認されている数値が、下の表になっているものであります。
 準備書にも環境影響評価の結果が載っているわけでありますが、1と2で、1は非常口(山岳部)から発生する微気圧波については、出口から20メートルの距離で18パスカル、50メートルでも9パスカルの音圧となります。18パスカルという数字はデシベルに、人間の耳はデシベルじゃないと聞き分けられないという話だそうで、いわゆる人間の耳にはどのような騒音レベルとして聞こえるかというのは、距離等の問題については厳密に置きかえないといけませんが、18パスカルを置きかえた結果としては119デシベルという数字になるそうです。この119デシベルというのは、ジェット機から50メートルほど離れて聞くジェット機の騒音とほぼ同じ音量だということであります。

最後になります。一番大きな問題の最後は、市独自の予防として、大萱古窯跡群への影響について最小限にするために、地上ルートではなくて地下化を要望してきました。文化財、景観保護のため、地上走行の被害を軽減する意味からも、地下ルート化を最後まで求めるべきだと私は思いますが、市は本当にもう、一言もこの問題については言わず、地上ルートで対応していくという考えで市の姿勢は変わらないのか、この点について改めて質問をさせていただきます。
 以上11点について、御答弁をお願いいたします。

市長(冨田成輝君) それでは、リニア中央新幹線に関する私への1番目の質問と、それから具体的な項目の8番目の大萱の件につきましてお答えいたします。
 昨年秋に環境影響評価準備書が公表されてから市は、「美濃桃山陶の聖地」久々利大萱地区を守るため、計画を地下に変更するようJR東海に意見を申し上げるなど、各方面に働きかけをしてまいりました。1月17日には、環境影響評価法に基づき地下化を求める旨の意見を、多くの方々からの賛同を添えて県知事に提出いたしました。県ではこの意見を受け、県環境影響評価審査会で審議が行われました。その審査を経て、3月25日に県知事からJR東海に提出された意見は、久々利大萱地区について特記されており、その重要性が改めて認識され、高く評価された内容となりましたが、結果的に地下化の方向までに至らなかったことは、まことに残念であります。
 現在でも、リニア中央新幹線は地下を通過することが同地区にとって最善であるとの考えは変わっておりません。しかしながら、環境影響評価法による環境アセスメントの手続は、県知事の意見を踏まえ作成された環境影響評価書に関係大臣から意見が提出され、必要な見直しを経て評価書が確定し、終了することとなります。その後は工事実施計画の認可へと事業が進められていく中で、大萱地区について、かたくなに地下化だけを求め、具体的な協議に応じず、時間だけが経過していくことは、市民や国民からの理解も得られないと考えております。そのことが大萱地区のためにも決してよくならないと判断したものでございます。
 「美濃桃山陶の聖地」大萱の歴史的・文化的価値を後世に残すことや住環境への影響について、現実的な対応を図るため、地上を前提としたJR東海の具体的な計画をもとに、地域の皆様、県、JR東海と、いよいよこれから本格的な協議に入っていくということでございます。そして、解決策を模索してまいるという考えでございます。
 議員が御指摘されたような残土の問題、あるいは工事中の問題、さらには地域住民の皆様が切実に考えておられる住民の生活環境や、あるいは陶工の皆さんの制作の課題等々、多くの難題があることは間違いございませんが、それらの非常に難しい困難な問題ではありますが、現実的な解決策を模索していくために新しい段階に入ったということで、頭を下げているんじゃなくて、そういった問題に改めて、これからが本格的な具体的な協議に入ろうというふうに決意をしているところでもございます。
 また、大萱古窯跡群の重要性への認識は高まっております。引き続き調査を実施し、国指定史跡を目指していくことに変わりはございません。その中で、JR東海の計画との共存の方策を関係者と引き続き協議してまいりたいと考えております。