2014年12月3日水曜日

日本自然保護協会の岐阜県知事及び中津川市長に対するリニア関連工区への要望書

岐阜県知事 古田 肇 殿 中津川市長 青山 節児 殿
公益財団法人 日本自然保護協会 理事長 亀山 章
        
             濃飛横断自動車道計画(リニア関連工区)への要望書


濃飛横断自動車道計画(リニア関連工区)事業のルート及びその近傍に点在する小湿地群 は、シデコブシ、ハナノキ、シラタマホシクサ、ヘビノボラズなどの東海丘陵要素植物と呼 ばれる、多数の希少な植物が生育する環境となっています。この湿地群は、環伊勢湾の独特 の地史を背景としてきたこの地域にしか存在しない特異な環境です。その重要性について はこれまでも研究者をはじめ多くの指摘があります。
今回公開されたルート案では、主要な小湿地群は回避されています。しかし、日本自然保 護協会が独自に解析した下記に示す結果から、本事業の実施により重要な小湿地群に不可 逆的な影響が出ることが予測されますので、環境影響の低減に関して以下の点を強く要望 いたします。

1.中津川市千旦林地区周辺で地形改変を行ってはならない 図1は、国土地理院提供の数値標高モデル(10m メッシュ(標高)をもとに ArcGIS を用いて TWI(Topographic wetness indices)指標による水の集まりやすさを評価した結果 を示したものです。この図の緑丸で示したものがハナノキの分布で、青色が濃いほど TWI 値が高く、地表面の水がより集まりやすいことを示しています。この図を見るとハナノキ の分布する小湿地群は、水の集まりやすい平坦地に連続する微緩傾斜地に特異的に分布し ていることがわかります。また、周辺には同様に水の集まりやすい平坦地に連続する微緩傾 斜地が広がっており、ハナノキが分布する潜在的なポテンシャルが高いことも判明しまし た。さらに図 2 は、地表面の水がどの方向に向かって流れているのかを東西南北 8 方位に 色分けして評価したものです。この図からその流向は一定の方向にまとまっているのでは なく、複雑に入り組んだ流向となっていることがわかりました。こうした場所で盛土や切土 による地形改変が行われることは、地表水の流向を変化させ、かつ水の集まりやすい場所を 変化させることとなります。その結果、ハナノキの分布する小湿地 群を物理的に回避した としても、水文環境を大きく変化させることは避けることができず、小湿地群の乾燥化を ひきおこし、この地域にしか存在しない特異な環境を破壊することになることが予測されま す。したがって、この地域での地形改変は行ってはならないと考えます。(図1〜2は省略)


2.環境影響の軽減措置の検討は公開の場で専門家による科学的な議論をもとに行われる べきである
当該地域の小湿地群の希少性と学術的な重要性は、以上の指摘の通りです。こうした場 所での環境影響の軽減措置の検討は、その妥当性を科学的根拠をもって示さなければ、合 意形成の手続き上も十分なものといえません。現地説明会では、「環境調査等について専 門家の意見を踏まえながら実施する」としていますが、専門家については、その氏名、所 属、専門分野を公表し、ふさわしい専門家であることを証明する必要があります。環境影 響評価の手続きでは、調査および影響予測、評価が科学的に行われること、住民等の意見 が民主的に聴取され反映されることが基本です。したがって、環境影響の軽減措置の検討 は公開の場での専門家による科学的な議論をもとに行っていただきたい。
日本自然保護協会
                                                以上

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