2015年1月22日木曜日

リニアに関する可児市民の意見(公聴会の公述)その4

(4)公述人D氏(可児市)<プロジェクター使用>

   私は久々利地内で先祖の代から農業しながら生活をしている者です。よろしくお願いいた
   します。一連のリニア説明会や意見書に対するJRの見解は通り一辺倒で、トンネル方式に
   してほしいという要望に対して真摯に受け止めているという姿勢が感じられません。再度こ の場をお借りして、リニアの久々利大萱地区高架計画に対し、トンネル方式に変更してほし いという立場からお話させていただきます。
久々利は歴史のある町でございます。泳宮(くくりのみや)という所に「ももきね 美濃 の 国の 高北の」という万葉歌碑があります。「泳の宮に 日向ひに 行靡闕矣(ゆきなびか くを) ありと聞きて 我が通ふ道の 奥十山(おきそやま) 美濃の山」というふうに、ちょ っと見ていただくとわかると思いますが。これは今から 1700 年ほど前、大和の国から偉い方 がこの地にいた豪族「八坂入彦命」の娘、八坂入媛に恋い焦がれ、この地を訪れたときの心 情を詠んだ歌と言われています。ここに出てくる「ももきね」という始めの言葉ですが、こ れは稲がよく分けつをしてお米がよく採れるという意味だそうです。また、「奥十山 美濃の 山」とありますが、久々利の浅間山の一帯を地元では今でも奥十山と呼んでいます。大萱地 区もその奥十山に含まれています。日本書紀に書いてあるということですが、偉い人が大萱 を訪れて、八坂入媛を娶られて帰られたということです。これが八坂入彦命の塚であります。
    このようなことから久々利は大変歴史の深いところであります。そのすぐ側をリニアが通るというふうに計画されています。このような看板もあります。この看板からリニアが通る方向を見たところでありますが、向こうに見える山のところからトンネルを抜け出て左の方へ走っていくというわけであります。
そして、時代は下り、安土桃山から江戸時代にかけて大萱、大平地区は陶器が盛んに作ら れました。国宝「卯花墻」に代表される志野、現在、牟田洞古窯跡の発掘を可児市にやって いただいています。あるいは織部、黄瀬戸、古瀬戸などと称する陶器が焼かれたわけです。 その古窯跡群が点在しており、まさに美濃焼の聖地であります。故人間国宝の荒川豊蔵先生、 あるいは加藤十右衛門先生はじめ多くの陶芸家がこの地を慕われ、この地で創作活動をして こられました。現在も7、8名の方が創作活動を続けておられます。この久々利の大萱はそ のようなことから、久々利、可児市の人々の心の拠りどころ、癒しの地となっていると言っ ても過言ではありません。そんな素晴らしい歴史、文化をこの地に残していただいた先代の 方々に感謝しております。現在、陶芸作家も二世、三世の時代に入ってきております。これ は古窯跡群の「えんごろ」という陶器を焼いた跡が今でも見られるわけです。これは荒川豊 蔵資料館への入口でありますが、このすぐ上をリニアが右から左へ走っていくという計画が あります。これはリニアが中津川の方に走っていくという計画をされている、向こうの谷へ 向かって走っていくというふうに計画されております。そのような場所にリニアが高架橋と して通過する。景観が損なわれるばかりか、近隣で生活する人々の不安は計り知れません。 陶芸作家の創作活動にも意欲が湧かないのも当然であります。可児市行政もこの芸術活動や 文化の継承に一生懸命後押ししていただいています。そのような地域にリニアは似合いませ ん。走らせて欲しくありません。新旧融合の模索と言われていますが、この地のこの組み合わせによるメリットは特に感じられません。
    次に汚染水に関してありますが、久々利一帯は美濃帯と呼ばれる砂岩、チャートを主とした堆積岩の地盤があります。その中の黄鉄鉱成分が水と反応し酸性水を作り出し、さらに酸 性水は他の鉱物と反応して重金属などの有害物質を溶出し汚染水となって河川に流出し下流 域に被害を及ぼすということになります。現に約 10 年前に東海環状線の工事に伴う残土が 久々利川上流域に埋められたため、このような事故が勃発し、下流域の水田はその被害を受 けました。先祖代々受け継いできた大切な水田、久々利の誇りである稲作に悪影響を及ぼし ました。現在もその対策として中和プラントを稼働させ水処理をして下流に流しています。 中和プラントを維持管理していくのにも毎年多額の経費がかかっています。こんなことは懲 り懲りです。薬品で中和をすれば水は良しというものではありません。元の水にはなかなか 戻りません。岩石や地表面は何千何万年とかかって風雨にさらされ、地表面が安定した安全 な状態になり、人を含めた生き物が生息できるのです。何千何万年とかけて自然が作り上げ てきた安全な地表が、表皮を削ることで一瞬にして振り出しに戻ります。封印されている物 を表にさらす。まさに毒水の入った容器に穴を空けるようなものではないでしょうか。見解 書には、トンネル化すると残土が余分に出るから高架が良いとか、たまたま窪地であったか ら地表に顔を出した、とありますが、何か子どもだましのように受け取れます。そんな回答 しかできないJR東海さんに本当に安全で環境に配慮したリニアができるのか不安です。こ れが美濃帯と呼ばれるものです。
次に移ります。大萱地域は氷河時代を生き抜いたと言われるギフチョウの宝庫であります。 そのギフチョウの一大生息地をリニアは通るように計画されています。ギフチョウが生息す るためには餌であるカンアオイの存在が不可欠であります。それを支える自然林が必要です。 順調な生態系があってこその存在で、それが一度崩れるとなかなか元には戻らないと言われ ます。これは久々利のダムであります。これがギフチョウであります。こんな久々利大萱を なぜ地上で通そうとするのか。何の事前の相談もなく線引きをして、ここを通りますから了 解をしてほしい。全く理に適っていません。地上に顔を出すことになれば、工事の大拠点と なることは避けられません。約 10 年の工事期間、そして事後処理にかかる時間を合わせると 余りにも長い歳月、地元住民は耐え難いです。こういった久々利区民、可児市民の声に真摯 に耳を傾け、誠意を持って受け止めて対応してほしいと思います。JRはこれらのことをよ く理解しルートをトンネル化に方向転換されることが、これからのJRに大きな力と大きな 利益をもたらすことになると考えます。今からルートを変更することは、お金も時間もかか ることになるから今更潜れないということだと思いますが、お金を使うということはこうい うところで使うことに価値があると思います。このリニア計画に携わるJRの方々、また行 政関係者の方々、皆さん頭脳明晰の方ばかり。知恵を絞って出し合って、何とかこの地区の ルートを地上を通らないトンネル方式に変更していただきたい。そういうことで久々利地区 の問題は全て解決されると思います。是非ともよろしくお願いいたします。これで私の公述 は終わります。ご静聴ありがとうございます。

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