2017年12月31日日曜日

外環道・五輪…大手ゼネコン頼り リニア談合の影響懸念

12/31(日) 15:18配信
朝日新聞デジタル
 リニア中央新幹線の建設工事をめぐる談合事件で、リニア事業や他の大型事業への影響を懸念する声が出ている。談合が認められれば、大手ゼネコン各社は巨額の課徴金を求められ、軒並み入札の指名停止処分を受ける異例の事態になる可能性があるからだ。

 東京・品川駅では昨年1月、リニア新駅の工事が始まった。だが、JR東海によると名古屋―品川間286キロの工事のうち3分の2が未発注。同社の柘植(つげ)康英社長は今月20日の定例会見で「工期に影響が出ないよう進めることが最優先」と述べた。ただ、もともと「余裕のない厳しい工程」(柘植社長)で影響が懸念されている。

 大手ゼネコン4社をめぐっては、今年9月、4社の共同企業体が受注していた東京外郭環状道路(外環道)の地下トンネル拡幅工事で、発注元と業者の契約手続きが中止された。談合の疑いが払拭(ふっしょく)できないと判断されたためだ。国土交通省関係者は「もう一回発注し直すとなっても、外環道のような難工事をできる会社は大手ゼネコン以外に少ない」と懸念する。

 2020年東京五輪・パラリンピックでは、大会組織委員会が来春以降、八つの仮設競技会場など40カ所で整備工事の発注を予定している。総費用は約3千億円。組織委の広報担当は「大手ゼネコンは幅広い分野に顔が利く強みがあり、内装や電気設備などの業者も集めてくれる。捜査状況を注視していきたい」と今後の動向を気にかける。

 大会後も残る恒久施設のうち8会場の工事を受け持つ東京都。都によると、すべての工事で契約を済ませた。契約先には大手ゼネコンが含まれるが、契約済みなので、指名停止になったとしても影響はない、とする。豊洲市場(江東区)についても、追加の安全対策工事全9件の契約を終えたという。(岡戸佑樹、三浦淳)
朝日新聞社

2017年12月25日月曜日

リニアに揺れるゼネコン 不正受注、大林組の申告に疑心 (2017年12月25日中日新聞)

リニア揺れるゼネコン 不正受注、大林組の申告に疑心 

2017/12/25 中日新聞
工事現場に掲げられた大林組、大成建設、清水建設のロゴ=東京都内で
 リニア中央新幹線を巡る事件は、わずか十日で名古屋市の一工事の不正入札容疑から、計画全体を舞台にした談合容疑へと急展開した。関与が疑われているのは、日本のインフラ整備を担うスーパーゼネコン四社。全容解明を進める東京地検特捜部と公正取引委員会に、大林組は既に“降伏”。「他に認めるところはないのか」。業界に疑心暗鬼が渦巻いている。

■矛先

 「絶対に許せない。うちは最後まで闘う」。ある大手ゼネコン幹部は憤まんやる方ない様子で談合を否定した。怒りの矛先は大林組だ。
 関係者によると、大林組は今月八、九日に名古屋市の非常口新設工事を巡る偽計業務妨害容疑で家宅捜索を受けた後、リニア工事での不正な受注調整を認め、課徴金減免制度に基づき公取委に違反を自主申告した。
 この捜索以前に特捜部は、大林組社員から役員のメモや受注予定を記した一覧表を入手。一覧表は、大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手四社を示すとみられる「O、K、S、T」のアルファベットが書かれた生々しい内容だった。
 特捜部と公取委は十八、十九日、今度は独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで大手四社を捜索。着々と外堀が埋められているが、自主申告した大林組は公取委の刑事告発を免れる可能性がある。
 日本建設業連合会(会長・山内隆司大成建設会長)の二十二日の理事会には、大手四社のうち大林組首脳は姿を見せなかった。理事会後の記者会見で山内会長は陳謝する一方、事件や大林組についてのコメントを避けた。
 「他に申告した会社があるのでは」「次はどこが」。大手ゼネコンの足並みの“乱れ”を受け、業界に波紋が広がる。

■けん制

 特捜部が入手し、捜査の端緒になった一覧表。その評価は業界内で分かれる。前出の大手ゼネコン幹部は「社内説明用の資料を作っていただけではないか」とみる。
 逆に「一覧が見つかると言い逃れできない」と話すのは、リニア工事を受注した共同企業体(JV)に参加している中堅ゼネコンの元幹部。ただ、特捜部が描く談合の構図には否定的だ。
 「各社がどこの工事を狙っているのか、けん制しながら探り合うのは普通に行われている情報収集。それを談合と言われるとつらい」
 業界の狭さを指摘する声も。特捜部の聴取を受けている大林組副社長や、大手四社と発注者のJR東海をつなぐ窓口役だったとみられる大成建設元役員は、東京都内の私立大土木工学科の同期生。同期には他にも大手から中堅までゼネコン入社組が名を連ね、結び付きの深さを想像させる。
 一方で、JR東海側でも、担当者が工事に関する非公開情報をゼネコン側に伝えた疑いが浮上している。民間発注工事の談合という異例の捜査に、幹部の一人は「おかしな入札方法ではなかったと思う。リニア以外の工事でも同じようにやってきて、談合なんて言われたことはなかったのに…」と戸惑いを隠さない。
 ある検察幹部は「工事費がもっと低ければ、利用者はJR東海からより良いサービスを受けられたかもしれない。自由競争とは何かを考えれば、放置できない」と捜査の意義を強調した。

2017年12月21日木曜日

リニア工事不正 大手4社談合事件について(2017年12月20日春日井リニアを問う会)

リニア工事不正 大手4社談合事件について春日井リニアを問う会の川本正彦さんの見解です。(2017年12月20日)メールから転記しました。




ゼネコンなれ合い ツケは国民 談合リニア 住民。怒りと不安(しんぶん赤旗2017年12月21日)

2017年12月21日(木)

ゼネコンなれ合い ツケは国民

談合リニア 住民、怒りと不安

名古屋で聞く


 安倍晋三政権とJR東海が強行するリニア中央新幹線の建設工事。総事業費が9兆円以上の巨大国家プロジェクトをめぐる不正入札事件が大手ゼネコン4社にまで広がりました。住民からは不正への怒りとともに建設工事による生活環境破壊への不安が広がっています。(原千拓)

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(写真)大林JVが不正入札で受注した疑いがもたれているリニアの名城非常口新設工事=名古屋市
「大手ゼネコン各社がなれ合いでリニア工事を分け合っているとしか思えません」。名古屋市のリニアを考える西区の会代表の小川輝夫さん(70)は、そう指摘します。
 リニア中央新幹線は時速500キロ超で走り、2027年に東京―名古屋、45年に大阪まで延伸し1時間余りで結ぶ予定。JR東海が事業主体で、安倍政権は16年に「大阪延伸の最大8年前倒し」を理由に3兆円の財政投融資を決めるなど国家的プロジェクトに位置付けています。
 東京地検特捜部は、大手ゼネコンの大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設が入札をめぐり談合した独占禁止法違反の疑いで、強制捜査にのりだしています。
 背景にJR東海が、同社が直接発注した入札の契約金額などを非公開にしており、住民らがチェックできない状況があります。
 小川さんは「リニアの工事費は財政投融資という形で公金が投入されています。リニアがうまくいかなければ、国民につけがまわってくる仕組みです。ますますJR東海によるリニア工事は許せません」と訴えます。
 JR東海は、全国新幹線鉄道整備法に基づき、沿線自治体に用地取得の業務を肩代わりさせています。名古屋市では、名古屋新駅を建設するため、市の外郭団体「名古屋まちづくり公社」に市職員やOBを派遣し、地権者に用地売却を強引に迫っています。
 中村・リニアを考える会事務局長の鳥居勝さん(69)はJR東海の対応について、こう批判します。「ある時は民間事業だといって必要な情報を示しません。またある時は公共事業という名目で立ち退きを迫ります。JR東海側の都合で使い分けをしています」

リニア建設 JR東海強引対応

用地取得ごり押し 住民「家出るの嫌」

JR東海は、地下30メートルの場所に名古屋新駅の建設をすすめています。南北に走るJR名古屋駅の新幹線などの線路と交差する形となり、東西約1キロメートルの区域内で用地取得が必要です。地権者は680人とされます。
 立ち退きの対象になっている名古屋市中村区に娘の家族と住む鈴木多づ子さん(80)はこう訴えます。「先祖代々からこの土地で住んできました。この年で新しい土地に住むのは大変だし、ご先祖様に申しわけないです。この家がなくなるのはとてもつらい。家を出るのは嫌です」
中村・リニアを考える会事務局長の鳥居勝さん(69)は「立ち退きは拒否できますが、周辺の家が契約に応じる中で、早く契約しろと追いつめられれば住民にとっては精神的苦痛になります」と指摘します。

「国家」の名で

JR東海側は国土交通省の認可を受け、リニアを「国家プロジェクト」としてすすめています。名古屋市の「名古屋まちづくり公社」はJR東海から用地取得を請け負い、市職員も派遣されています。鳥居さんは「行政側が用地取得に来ると住民はむげに断れないのが現状です」と話します。
 リニアは東京、名古屋など大都市部でも、地下40メートル以深の大深度地下トンネルを走行します。40メートル以深は、地権者への事前補償が原則として不要とされています。
 名古屋市の中村区と西区の一部では、トンネルから名古屋新駅にかけて地下40メートルより浅い区域です。地上の建物の立ち退きはありませんが、敷地が地下トンネルにかかる「区分地上権」設定の対象となります。
 鳥居さんは「区分地上権が設定されると土地利用に制限がかかったり、周辺地域にも影響がでます。にもかかわらず、JR東海側は、『トンネルにかかる面積の範囲のみの補償しかしない』『ビルの土台などのくいがトンネルに重なれば削る』『建物の荷重制限などにより建物の補償は一部だけ』などJR側の都合だけで条件を提示してくる」と怒ります。

説明あやふや

リニアを考える西区の会代表の小川輝夫さん(70)によると区分地上権の地域にかかる高層マンションなどでは、説明会は開かれたものの住民に対する補償が具体的に示されていないといいます。
 JR東海はトンネルの影響による事故が起こったときの補償については「基準にしたがって戸別ごとに対応する」と説明するだけで実際どこまで補償するかはわからないと鳥居さんは指摘します。
 JR東海は「丁寧な説明で理解を求める」としていますが、説明会ではマスコミはすべてシャットアウトで、用地についての説明会では参加は地権者のみ。周辺住民への説明会では発言は1人3問までで再質問はなしと厳しい条件を設定しているといいます。
 鳥居さんは「地権者の意向にそった補償をするならまだしも非常に傲慢(ごうまん)なやり方です。生存権の侵害でもあります」と話します。
 小川さんは、指摘します。「工事で出る残土の運搬やそれにともなう騒音や環境汚染など地権者の問題だけでなく、周辺地域にも影響が出ます。リニア開発の問題点をもっと広めなければなりません」

ゼネコン4社、発注予定5件も談合 リニア工事(2017年12月21日中日新聞)

ゼネコン4社、発注予定5件も談合か リニア工事 

2017/12/21 朝刊
 リニア中央新幹線の工事を巡る談合事件で、大手ゼネコン四社が、既に受注している十五件に加え、今後発注される予定で現在入札手続き中の五件でも受注調整をしていた疑いのあることが、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は四社幹部らの任意聴取を進め、ゼネコン間の具体的なやりとりを詳しく調べる。
 JR東海は二〇一五年以降、トンネルや駅、非常口の新設といった計二十二件の工事契約を締結。うち十五件は、スーパーゼネコンと呼ばれる大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手四社が代表の共同企業体(JV)が三、四件ずつ受注している。
 さらに、神領(じんりょう)非常口(愛知)、第一中京圏トンネル大森工区(岐阜)、第一中京圏トンネル坂下西工区(愛知)、第一首都圏トンネル北品川工区(東京、神奈川)、国道16号交差部トンネル(神奈川)の五件の工事は現在、入札手続きが進められている。
 特捜部は、四社の担当者が既に契約済みの十五件だけでなく、受注企業が決まっていない五件についても受注予定者や入札価格を協議していた可能性があるとみて捜査している。
 JR東海は、この五件以外に今後発注する予定の工事件数を明らかにしていないが、全体の事業計画では、相模原市、甲府市、長野県飯田市などに建設する中間駅のほか、トンネル四十三本、非常口四十七カ所を新設するとしている。
 ゼネコン関係者によると、契約済みの十五件のうちリニア名古屋駅の新設工事では、当初本命視されていた大成建設が受注せず、大林組のJVが受注しており、特捜部が背景を調べている。

2017年12月19日火曜日

「難工事」立件の壁 リニア巨額受注、独禁法適用で新局面(2017年12月19日中日新聞)

「難工事」立件の壁 リニア巨額受注、独禁法適用で新局面 

2017/12/19 中日新聞
 リニア中央新幹線の建設工事の入札を巡る東京地検特捜部の捜査は18日、独禁法違反容疑でのスーパーゼネコンへの家宅捜索で新たな局面を迎えた。水面下で違法な受注調整を繰り返したとの疑惑をゼネコン側は完全否定。発注者のJR東海も「契約は適正に行われた」との立場だ。ただ、高い技術力が求められる難工事が多く「請け負える企業は限られる」との指摘も出ており、立件へのハードルとなりそうだ。

◆ターゲット

 「何も不正なことはなかったと思います」。十八日朝、集まった報道陣に、鹿島の幹部は困惑気味に話した。特捜部が同社の本社や支店ビルを捜索したのは、この約三時間後。約四キロ離れた清水建設の本社も対象となった。
 東京地検特捜部による捜査の動きは、偽計業務妨害容疑での大林組への家宅捜索で明らかになった。対象は地下トンネルと地上をつなぐ名古屋市の「名城非常口」新設工事。落札できなかった鹿島は当初、公正な入札を妨害された“被害者”の立場だった。
 しかし、独禁法を所管する公正取引委員会が捜査に加わる新展開で、特捜部のターゲットが大林組一社の不正だけではなく、工事全体を舞台にした業界の慣習へ移ったとの見方が広がっている。

◆技術が必要

 リニア中央新幹線は、二〇二七年に先行開業する東京・品川から名古屋までの二百八十六キロのうち、86%をトンネルが占める。山梨、長野、静岡三県を通る約二十五キロの南アルプストンネル建設は地表から約千四百メートル付近を掘削。トンネルに強い負荷がかかり、高圧の水脈に突き当たる恐れもある。
 「入札の形式を取ってはいるが、アルプスをぶっ通す工事なんて技術力と体力がある大手じゃないとできないことは、分かりきっていることだ」。ゼネコン業界に詳しい弁護士は断言した。
 名古屋駅は地下約三十メートルに建設予定で、東海道新幹線や在来線の運行を続けながら進める難工事。地下約四十メートルでの品川の新駅工事も、新幹線の運行が終わった夜間にしか実施できず、関係者は「海に近く、地盤が軟弱で、簡単ではない」と指摘する。

◆意思の連絡

 大林組の幹部は取材に、鹿島側との情報交換を認める一方、内容はJR東海から出された入札条件の再確認にとどまり、違法性はないとの認識を示している。
 「情報交換」や「再確認」は、独禁法違反に当たる行為なのか。
 独禁法に詳しい植村幸也弁護士は、不正な受注調整の有無の認定には「業者間で意思の連絡があったかどうかがポイントになる」と解説する。
 工事の配分に関する具体的なやりとりがなくても、ある業者が一方的に特定の工事を取りたいとの意向を伝えたり、役員や担当者間で工事に関する会話をした状況が確認されたりするだけでも、独禁法違反に問われる可能性があるという。
 一方、元検事の郷原信郎弁護士は、そもそもトンネル掘削などの難工事を請け負える企業が少ないため、過去の談合事件などと同様の捜査では解明が難しいと指摘する。

2017年12月18日月曜日

ゼネコン4社近く捜索(2017年12月18日中日新聞)


リニア入札 「国家的事業」のはずが契約額も落札率も非公表 不正で注目 JR東海の入札方式(2017年12月18日しんぶん赤旗)

リニア入札 「国家的事業」のはずが

契約額も落札率も非公表

不正で注目 JR東海の入札方式

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 JR東海がすすめるリニア中央新幹線の不正入札事件をめぐり、入札情報開示の在り方が問題になっています。同社が直接、発注したリニア工事の契約額や入札経過が非公表だからです。建設費は約9兆円で政府が財政投融資から3兆円を低利で融資します。国家的大型プロジェクトにもかかわらず、国民や国会が不正をチェックできない構造になっています。(記事・三浦誠、写真・原千拓)

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(写真)大林JVが不正入札で受注した疑いがもたれているリニアの名城非常口新設工事=名古屋市
「リニアはゼネコンにとってぜひ受注したい大工事だ。ゼネコンは10年ぐらい前から受注にむけて工法などを研究してきた」。リニア工事を受注している中堅ゼネコンの元幹部は、いいます。
 東京地検特捜部が捜査の対象にしているのは、大手ゼネコン「大林組」を幹事社とするJV(共同企業体)が2016年4月に受注した「名城非常口」の新設工事です。
 この工事は、リニアが走る地下トンネルの非常口として直径40メートルの縦穴を90メートル掘るというもの。JR東海は、「公募競争見積方式」で入札しています。ゼネコンが提案する技術と価格をJR東海が評価して順位をつけ、上位から契約金額を協議して決めるという方式です。大林組は、他社と受注調整して工事を不正に受注した偽計業務妨害の疑いがもたれています。

■1キロ単価125億円

前出のゼネコン元幹部はこう解説します。「大林をあわせて数社で受注を争ったと聞いている。非常口の工事をとれば、そこにつながるリニアの地下トンネル工事の受注競争で有利になる。トンネル工事は工事金額も大きい。だからなんとしても非常口の工事を取りたかったのではないか」
 リニアの工事は総額で約9兆円です。1キロあたりの単価は約125億円。21世紀になって最大の大型開発とされています。
 工事は長距離にわたり地下深くにトンネルを掘る難工事の連続です。南アルプス山岳地帯を貫くなど自然環境の破壊が懸念されています。また掘削にともない大量の残土が発生。残土の運搬とあわせて、沿線住民から生活環境の悪化を懸念する声も上がっています。
 ところが安倍晋三首相はリニア建設が「未来への投資を加速する効果がある」(衆院本会議、16年9月28日)などと、財政投融資で3兆円の融資を決めました。国が資金を調達し、低金利でJR東海に貸す仕組み。「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指す安倍政権の象徴となる巨大プロジェクトです。
 ほかにも私有地の強制収用ができ、不動産取得税の非課税措置を受けています。政府が旗振りをし、多くの優遇措置をうけるなど公共事業に等しい位置づけです。
表

■開示の義務なし

しかし、民間工事という理屈で、JR東海には情報開示の義務がかされていません。
 リニアの主な工事は、15年6月から現在まで22件が契約済みです。このうち名城非常口を含め、JR東海が直接発注した19件の工事は契約金額や入札参加者を非公表にしています。同社は非公表の理由を「価格を公表すると今後の発注に影響する」としています。
 このためJR東海は受注業者に守秘義務契約を求めています。リニア工事を多く受注している大林組、鹿島建設、大成建設、清水建設の大手ゼネコン4社が国交省に提出した「工事経歴」をみても工事名、契約金額はほぼ記載されていません。
 例外的に大成が「南アルプストンネル(山梨工区)」を約183億2900万円で受注したことを記しており、契約金額が高額であることが分かります。
 工事費がJR東海グループに“還流”している事例も。名古屋駅(中央東工区)の工事は、JR東海子会社の「ジェイアール東海建設」を幹事社とするJVが受注。ほかの工事は競争入札の形をとっているのに、この工事だけは随意契約になっていました。
 大手ゼネコンの元幹部は、「JR東海は子会社に受注させて利益をグループ内に還元している」と言います。この工事も金額は非公表です。
 他方、JR東海が独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(鉄道・運輸機構)に委託して発注した3件の工事は入札経過が公表されています。これら3件の工事は予定価格に対する契約金額の率(落札率)は、86・5~90・3%。談合が疑われるとされる落札率は95%以上で、これより低い数字で落札されています。
 国土交通省は、「入札契約適正化法」で入札経過の事後公表を義務付けています。公表されれば不自然な入札は、マスコミや市民がチェックできます。国交省の担当者は「事後公表は談合など不正行為の防止に寄与する」と説明します。JR東海のように、非公開では外部からのチェックも働きません。

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(写真)本村伸子議員

不正解明し中止を 本村議員

国会でリニア問題を追及してきた日本共産党の本村伸子衆院議員は、こう指摘します。
 「リニア工事は、南アルプスをはじめ甚大な自然や生活環境の破壊をもたらします。また自治体に土地買収を協力させ、土地の強制収用ができます。地下40メートル以深は地権者の同意もいらないなど、住民の権利を侵害します。不正を解明するためにも情報公開を徹底し、工事を中止し、すべてを検証すべきです」

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2017年12月15日金曜日

第4回市議会(2017年9月7日)における田原議員の太陽光発電に関する質問と市の回答



第4回可児市議会(2017年9月7日)における田原理香議員の質問
・市の回答
(第5回議会にも同議員は質問しているが、市議会ブログには未掲載 なお建設市民委員会でも12月13日桜ヶ丘ハイツ内欅ヶ丘地区に計画されている大規模太陽光パネルについて請願者に対する委員からの質問や審議が行われた。)なおいずれもユーチューブには動画がアップされている。

◯2番(田原理香君) 2番議員、誠颯会、田原理香です。
 通告に従いまして、一括答弁方式で質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、先日は腰を痛めましたことで皆様に御心配・御迷惑をおかけいたしました。申しわけありませんでした。おかげさまで、このようにしっかりと立って話すことができます。この場をおかりいたしまして御礼申し上げます。ありがとうございました。
 さて、私は今回、太陽光発電を取り上げました。きっかけは、やはり何といってもバローの流通センターから柿下におりてくる途中、県道多治見白川線沿いにある太陽光発電施設の設置にあります。そのあたりは、地元のどなたかが竹林をきれいに整備されて管理されていることで、印象的なところでした。ところがある日、その隣でいきなり木々が切り倒されて、伐採され、そして根っこが取られて土がむき出しになり、太陽光パネルが一面に敷き詰められていきました。急勾配ということもあって、つくっていく過程でショベルカーがひっくり返ったりもしていました。大雨のたびに土砂が下へ下へと流れ出して、幾重にもたまっていきました。
 私は、再生可能エネルギーが大事だということはもちろんわかっているつもりですし、自然を壊してまでの自然エネルギーの創出は違うだろうと思っています。
 それにしても、こんなことができてしまうのかと調べました。そうです、可児市におきましては、太陽光発電において特化しての縛りというものはありません。
 そしてもう一つ、きっかけの一つとして、深刻なことに、これまで桜ケ丘、皐ケ丘、桂ケ丘に続いて一体感のまちづくりとして進めてきました欅ケ丘のところです。この皐ケ丘と桂ケ丘の間にある欅ケ丘に1万8,000平米もの太陽光発電施設設置の計画が事業所から持ち出されて、良好な住宅地ができるものと思っていたところに、このような施設ができるなんて、一つ通ってしまったら、このままパネルが一帯に張られてしまうことになるんだろうか、大変なことだと、住民から不安の声が上がっています。果たして、可児市はこうした太陽光発電施設設置の現状について、どうお考えでしょうか。このままでいいでしょうか。何が問題で、またその問題をどうしたら解決していくのでしょうか。
 私は、今回も知る限りの現場に何度も足を運び、近隣にお住まいの方、その地域の自治会長の方々にお話を伺ってきました。そして、また太陽光発電について取り上げて進めてみえるほかの自治体にも行って、担当者から直接お話も聞いてきました。きょうは、ぜひ市に問題を投げかけて、提案をもしていきたいと考えております。住みごこち一番・可児、施政方針にもあります安心と安全を確保する可児市としてどのような対策をとっていかれるのか、御答弁を期待したいと思っております。よろしくお願いします。
 ここで、何といっても百聞は一見にしかずです。可児市におけます3,000平米以上の太陽光発電施設の設置の予定のところ、そして現在もう建てているところ、7カ所を順番に見ていってください。
 まずこちらは久々利です。我田の森のそばの里山のところです。ちょうど行ったときはショベルカーが動いていました。大雨の翌日に行ったときは、山の下あたりは膝下までが埋まってしまって泥沼化してしまいました。
 これは、先ほど話に出ました柿下の県道多治見白川線沿いにある太陽光発電施設設置の様子です。もう一個あります。どんどんと土砂が下へ流れ、堆積している様子がわかるかと思います。ここには写っていませんけれども、何本かの電線が簡易カバーに覆われて、地面の上をはっておりました。
 そして、これは谷迫間にあるところです。実は、この小高い上のてっぺんに、樹木に囲まれて、この方のおうちは建ててありました。3面ある斜面の2面、といってもほとんど周り一帯が太陽光発電の施設となり、5,800平米、一面が、広くて、また急勾配にあるので、このおうちの方は、大雨のたびに大きな影響が出やしないかと心配されてみえました。また、このおうちの方がお一人ということや素人ということもあって、なかなか事業者に相手にされずに、お話を聞いていて考えさせられることばかりでした。
 これは、今にあるところです。ここにこの方のおうちがあります。この家の裏と横、もう一個お写真があります。この家の裏と横が、一面が太陽光パネルとなっております。ちょうど248号バイパスで多治見市から可児市になったところで、こういった景色が飛び込んでくると思います。この方は、ここが竹林だったんですが、いきなり切られていて、何事かと慌てて市へ連絡されたとおっしゃっていました。
 また、このオイルですけれども、山の上から流れてくる水に油が浮いていて、パネルに関係あるんじゃないかというふうに、20年間一度もなかったことで、どうしたことだろうと危惧されていました。ここのおうちの前にも2軒ほど家があるんですが、ここは小さいお子さんがいらっしゃる若い世帯の方々です。何かあったときに、ここの土砂が私どもの道へ流れてこやしないか、また簡単に入れてしまう、危険ではないだろうか、何かあったときにどこへ連絡したらいいだろうという不安の声がありました。
 これは、土田と今渡のちょうど境目にあるところです。もともとここの太陽光は畑一面でした。お世話ができなくなって可児市外の方に手放され、今はこの太陽光パネルと、こちらにあるアパートに変わりました。このあたりに住んでいる人が、嫌な人が住むよりはましだねという声ももちろんあったんですが、でも、ちょうどこの太陽光パネルの隣の方が自治会長のおうちで、本当は建つ前に聞きたいことがいっぱいあったのに、できてしまってからではもう遅いというふうに残念がってみえました。
 これは、塩河にお住まいの方はこの景色をごらんになったことがあるかと思います。塩河にあります可児市最大の規模で、3万8,000平米の太陽光発電施設です。こちら、前に調整池が設けてありました。
 そしてこちら、大森です。里山が削られて、一面に太陽光発電施設が設置されました。
 写真を見ていただきましたところで、本題に入っていきたいと思います。
 化石燃料発電や原子力発電の問題がクローズアップされる中、再生可能エネルギーの導入は、電力需要を賄う上で、現在もこれからも必要不可欠であると考えられます。中でも、太陽光による発電は環境にも優しく、再生可能エネルギーの中ではかなり重要な位置を占めると思われます。しかしながら、太陽光発電の導入が進む現在、防災・安全の確保や景観の配慮、生活環境保全に一切配慮しない一時的な営利が目的だけの事業者がいることも確かで、発電施設の設置運営にかかわる問題点が明らかになりつつあります。
 まず現状では、太陽光発電施設の設置を規制する法律や基準がないことが問題として上げられます。そもそも太陽光発電施設は建築物ではないので、都市計画法で求められるような開発許可は必要ありません。可児市においては、市民参画と協働のまちづくり条例があり、このおかげで、面積3,000平米以上の開発においては市と協議する、地域のコミュニティー団体などに対して説明責任が課せられているため、協議が必要となって、市として3,000平米以上の太陽光発電においては判明ができています。現在、可児市で3,000平米以上を把握しているものは6件ありますが、3,000平米未満の施設に関しては協議をする必要がないため、どこにどれだけあるのか、市として把握することは難しいのが現状です。既に設置されている太陽光発電施設の中には、住宅に隣接し、地域住民の生活環境に不安を与えているものや土砂災害の恐れ、自然環境の悪化を心配せざるを得ないものもあります。また、良好な景観を保持する点からも見逃すことができない場所に設置されているものもあります。
 先ほど申しましたが、太陽光発電施設設置を見てまいりました。施設の近隣に住む住民の方々と意見交換を行ってまいりました。これらを通して、さまざまな課題や問題が見えてきました。
 可児市では、市民参画と協働のまちづくり条例において、3,000平米以上の開発においては説明責任を課していますが、3,000平米以上であっても、説明を受けずに、いきなり開発に至ったという声もあちらこちらで聞かれました。また、それらの開発に伴う森林の伐採や伐根及び切り土による土砂災害の危険性が生ずるのではないかという不安の声も多く聞かれました。別のところでは、落雷による影響を心配する人も見えました。さらに、幼い子供を持つ家庭からは、高電圧を扱う施設でありながら簡単に侵入できてしまうなど、日常的な管理がルーズにはなっていないかという声も聞かれました。そしてもう一つ、将来発電事業を終了したとき、きちっと撤去が行われ、土地の現状が回復されるのか、全く保証がないことや、放置されて不法産業廃棄物化するのではないかという不安の声も多くありました。特に3,000平米未満の開発の場合は協議もないため、地域の住民は事業者が誰なのか知ることはできません。何か不都合なこと、トラブルが起きたとき、どこに連絡をして、どのように対応したらいいのかわからないのが現状です。
 市内では、これからも先、太陽光発電施設の設置が民間事業者によって進められることが予想されます。安心して生活できる住環境や良好な市民生活を維持し、自然環境や景観を守るために、例えば立地を避けるべきエリアを画定するなどの一定の規制を含む太陽光発電施設の設置にかかわる何らかのガイドラインもしくは条例などを設けることが必要だと考えています。
 環境省も、太陽光発電の必要性を認めつつ、生活環境や自然環境とのバランスをとるようとの太陽光発電の環境保全対策に関する自治体の取り組み事例集を参考資料として各自治体に出しています。また、全国市長会では、ことしの6月に太陽光発電施設の設置について、景観や環境保全での基準を設けて許可するなどの法的規制を求める「エネルギー施策に関する重点提言」を国に提出しておられます。
 可児市として、現状をどう考え、これからの良好なまちづくりの視点において、どのような対策を講じるおつもりがあるのでしょうか。行政として、住みごこち一番の可児市を標榜している以上、他自治体に率先して取り組む心意気はあっていいのではないかと考えます。
 改めて現状を踏まえ、以下質問いたします。
 小項目1.市内における太陽光発電施設(建築物は除く)の現状と今後の対策について。
 1.可児市内での市と協議がされていない太陽光発電施設、すなわち3,000平米未満の施設について、市はどのように把握をしているのでしょうか。また、可児市との協議を行った発電施設6件は、それぞれ何キロワットなのかもあわせてお示しください。
 2.地域に対する事業者の説明責任とはどういう形で課しているのでしょうか。市は、地域に対する説明をどのように把握しておられますか。事業者の報告による確認だけなのでしょうか。それとも、地域住民からも確認をとってみえるのでしょうか。
 3.太陽光発電施設の設置に当たり、市民から市に何らかの不安の声や苦情は届いているでしょうか。また、あるとしたら、それはいつ、どのような内容で、どう対応なされたのでしょうか。
 4.土砂災害などが危惧される場所に太陽光発電施設を設置する際に、市として何らかの助言や指導はなされたのでしょうか。また、市として調査をしたことがあるのでしょうか。
 5.万が一、太陽光発電施設で落雷、大雨、台風、地震などによる災害や土砂災害があった場合、どのような対応策をとるのでしょうか。また、そのおそれがある場合も、市はどのような対策をとるのでしょうか。
 6.市において、地域住民の不安を解消し、安心して生活ができるため、また自然環境の保全、災害の防止などから、例えば以下のような規則を含むガイドラインもしくは条例などをつくる必要があると考えます。市としてはどのように考えますでしょうか。
 例えば太陽光発電事業の実施に当たり、災害防止・森林保全、農地保全、景観・自然景観保全、自然環境・生態系保全のために立地を避けるべきエリアを設ける。例えば災害防止・森林保全では、砂防指定地域、地すべり防止区域、急傾斜崩壊危険区域、土砂災害特別警戒区域、土砂災害危険箇所など。発電施設の設置に伴う災害の防止、これは例えば土地の形質変更を最小限にとどめるとか、勾配を緩和して、のり面の安定化を図るなどのこと。また、良好な景観の形成。道沿いとか、民家のところについては直接見えないようにフェンスを張るとか、植栽をするとか、目立たないようにという、例えばです。次に生活環境の保全。水質汚濁、騒音の防止、それから反射光の対策など。地域住民との合意形成。十分協議をし、良好な関係のため地域住民の理解を得る。発電施設の設置に関する指導、指導要綱等です。あと、発電施設の適切な維持管理。例えば定期的な保守点検、管理者の掲示、敷地内への立ち入り防止、異常気象発生時の対応、発電施設の撤去・廃棄などのガイドラインもしくは規制をどうでしょうかということです。
 7.太陽光発電施設設置について、国や県とのやりとりはあるでしょうか。あれば、内容を含めてお聞かせください。
 8.全国市長会は、ことし6月、太陽光発電施設について、景観や環境保全で基準を設けて許可するなど法的規制を求め、国へ提言されました。市長も、市長会の副会長として同席されたと聞いております。太陽光発電施設の設置に当たっては、電気事業者による再生可能エネルギー、電気の調達に関する特別措置法において、防災・安全の確保、景観への配慮、周辺環境の保全、施設の適正な撤去・廃棄の観点から基準を策定して許可するなど、法的規制を行うなどとあります。
 市長にお尋ねします。市内に太陽光発電施設が設置されつつあることについて、市長はどのようにお考えでしょうか。
 小項目2.住民主体のまちづくりを推奨している地域、桜ケ丘ハイツ、欅ケ丘での太陽光発電施設設置の計画について。
 欅ケ丘では、宅地造成として砂利採取作業を進めている東側に太陽光発電施設を設置する計画があります。この計画の概要説明が、7月末、桜ケ丘ハイツ自治連合会定例役員会において事業者側から行われました。この計画は、4.8ヘクタールに発電量約1.9メガワットの太陽光発電施設を設置するというもので、この事業者から、工事の作業時間、騒音、振動対策、工事車両の安全対策、現場管理、現場の風致対策、工事による危害対策、プライバシー、自然環境保護などについて説明がありました。市の見解をお尋ねします。
 そもそも欅ケ丘は、桜ケ丘、皐ケ丘、桂ケ丘に続いて、桜ケ丘ハイツとして一体のまちづくりを目指してきた地域です。これまでも自治連絡協議会、3自治会、まちづくり協議会など、住民主体のまちづくりとして、市と協働で進めてきました。また、可児市都市計画マスタープランに即した可児市決定の都市計画において、欅ケ丘は戸建て住宅づくりの第1種低層住居専用地域などと設定され、将来良好な住宅地として計画されているにもかかわらず、太陽光発電施設計画が持ち上がっており、欅ケ丘内の多くが太陽光発電施設に占められてしまう可能性がないとは言えない状況の中、市はそうした計画にどう考えているでしょうか。
 また、都市計画マスタープランと太陽光発電施設との関係を、市はどのように考えていますか。
 そして最後に、開発する区域にはギフチョウ、ヒメヒカゲ、シデコブシ、サギソウなど貴重な動植物が生息しています。これらの動植物への影響をどのように考えていますか。また、保全についての見解をもお聞かせください。
 以上です。よろしくお願いします。

◯建設部長(三好英隆君) お答えします。
 初めに、小項目1の市内における太陽光発電施設の現状と今後の対策についてお答えします。
 1つ目の、市との協議がされていない3,000平方メートル未満の太陽光発電施設について、市はどのように把握しているのか。また、市との協議を行った発電施設6件の発電能力はそれぞれ何キロワットなのかという御質問にお答えします。
 市は、事業区域の面積が3,000平方メートル未満の太陽光発電施設については把握しておりません。また、市と協議を行った発電施設6件の発電能力は2メガワット、551キロワット、500キロワット、324キロワット、216キロワット、150キロワットです。
 2つ目の、地域に対する説明責任はどういう形で課しているのか。また、市は地域に対する説明をどのように把握しているのか。事業者の報告による確認だけであるのか、地域住民からも確認をとっているのかという御質問にお答えします。
 市民参画と協働のまちづくり条例、開発協議の対象事業第27条第1項第2号で、開発行為を除く事業区域の面積が3,000平方メートル以上の土地の区画形質の変更行為を開発協議の対象としており、第31条、開発事業の説明責任で、地域コミュニティーや利害関係者への説明責任を課し、市への報告を義務づけています。報告内容が正しいか否か疑問が生じる場合には、地域住民に確認することもあります。
 3つ目の、太陽光発電施設の設置に当たり、市民から行政に何らかの不安の声や苦情はあったのか、どのような内容でどう対応したかという御質問にお答えします。
 条例の協議にかかる3,000平方メートル以上の案件についてですが、工事施工前については、既存道路が狭いため工事中や工事後の道路の通行に対しての不安の声がありました。狭い生活道路を通行しないよう、別に進入路を確保するように指導しました。
 工事施工中については、近隣住民から「知らないうちに工事が始まったが、どのような工事か」との問い合わせがありました。事業者が条例を知らなかったため、条例の趣旨を説明し、地域への説明と市との協議を指導しました。また、伐根した後の大雨により道路、民地に土砂が流出したとの苦情があり、事業者に対し、土砂の撤去及び今後の対策を指導しました。また、仮設沈砂池の容量が小さかったため、農業用水路や横市川に赤水が流出したとの農業水路の管理者から苦情がありましたので、事業者に仮設沈砂池を拡大するように指導しました。また、建物周りにできた斜面が崩壊しないか不安であるとの相談を受けましたので、事業者に、のり面崩壊を防止するために安定勾配とすること、種子吹きつけすることなどを指導しました。
 工事施工後については、次のような苦情等がありました。
 平成29年8月18日の大雨により、民地内に土砂が流出したとの苦情があり、現在、今後の流出防止策について市と事業者で協議を進めています。また、大雨により隣接する畑へ伐採した木の切り株が落下したとの苦情があり、事業者に撤去させました。条例の協議にかからない3,000平方メートル未満の案件については、工事施工中に県道へ土砂が流出したため、事業者及び可茂土木事務所に対応をお願いし、土砂流出対策がなされました。その他、市民からではありませんが、太陽光発電施設を設置するための山林伐採による苦情についての情報提供がありました。これ以外は、3,000平方メートル未満の太陽光発電事業に対する苦情等は受けておりません。
 4つ目の、土砂災害などが危惧される場所に太陽光発電施設を建設する際に助言や指導を行ったか。また、市としての調査をしたことがあるかという御質問にお答えします。
 土砂災害が危惧される箇所は、県が土砂災害特別警戒区域や土砂災害警戒区域に指定していますが、土砂災害特別警戒区域内においても太陽光発電施設の設置は規制を受けないため、特段の指導はしておりません。
 5つ目の、太陽光発電施設で落雷、大雨、台風、地震などによる災害や土砂災害等があった場合、どのような対応策をとるか。また、そのおそれがある場合、市はどのような対策をとるかという御質問にお答えします。
 災害が発生した場合は、事業者の責任において災害復旧をすることとなり、必要な場合はその方向で指導します。また、災害のおそれがある場合についても、同様に事業者に対し防災対策を指導します。
 6つ目の、地域住民の不安を解消し、安心して生活ができ、また自然環境の保全、災害の防止などの点からガイドラインや条例をつくる必要があると考えるが、市はどのように考えるかという御質問にお答えします。
 条例による立地を避けるべき地域を指定したとしても、強制する法的根拠はなく、条例化の意味はほとんどないと考えます。また、平成29年3月に、資源エネルギー庁において太陽光発電の事業計画策定ガイドラインが策定され、今後計画される太陽光発電事業においては、議員が御指摘になられた住民との合意形成、生活環境の保全、災害の防止、異常気象発生時の対応、発電施設の撤去・廃棄などについても遵守すべき事項として示されましたので、改めて条例やガイドラインの策定はいたしません。
 7つ目の、太陽光発電施設設置について国や県とのやりとりはあるか。あれば、内容を含めて聞きたいという御質問にお答えします。
 太陽光発電施設の設置そのものについては、特段の規制はなく、国・県とのやりとりはありません。また、1ヘクタール以上の森林を伐採する場合は、森林法に基づき県の林地開発許可が必要となり、防災措置等について可茂農林事務所と調整しています。
 8つ目の、市内に太陽光発電施設が設置されつつあることについて市長はどう考えるかという御質問にお答えします。
 議員御承知のとおり、太陽光発電施設の設置は、法令違反がない限りとめることはできません。しかし、市民の皆様から具体的な不安や被害の状況等をお聞かせいただければ、条例の協議の対象でない場合も含めて、今までどおり、できる限りの対応をしてまいりたいと考えております。
 次に、小項目2の、住民主体のまちづくりを推奨している地域、桜ケ丘ハイツ、欅ケ丘での太陽光発電施設設置の計画についての1つ目の都市計画マスタープランと太陽光発電の関係を市はどのように考えているかという御質問にお答えします。
 都市計画マスタープランでは、欅ケ丘の未開発区域では、周辺環境と調和した開発の誘導を図ると位置づけています。欅ケ丘地区では、第1種低層住居専用地域と近隣商業地域の用途地域を指定し、良好な住宅地の誘導を図っておりますが、太陽光発電施設の開発計画については、用途地域指定により制限されるものではなく、都市計画マスタープランが主として想定する住宅地ではないものの、都市計画マスタープランで除外する施設としては考えておりません。以上です。

2017年12月13日水曜日





2017年12月13日の読売新聞、産経新聞、KYOTO SEIKEIなどの報道である。

2017年12月12日火曜日

リニア工事、大手4社が分け合う 3〜4件ずつ受注(2017年12月12日中日新聞)

リニア工事、大手4社が分け合う 3~4件ずつ受注 

2017/12/12 朝刊
リニア中央新幹線の非常口新設工事現場=11日、名古屋市中区で
 大手ゼネコン大林組に東京地検特捜部の強制捜査が入ったリニア中央新幹線の入札妨害事件。リニアは、総工費九兆円を超える巨大プロジェクトで、これまでに二十二件の契約が締結されている。大林組を含む大手ゼネコン四社の共同企業体(JV)が、それぞれ三~四件ずつ受注。工事を分け合う構図となっている。
 受注調整などの不正があった可能性があるとみられている「名城非常口」(名古屋市中区)は、愛知県内で最初に契約が成立した工事。東京地検特捜部に偽計業務妨害容疑で捜索を受けた「大林組」が受注した。現時点で、同社はゼネコン四社で唯一、品川と名古屋の両方の駅部工事も担当する。
 特捜部が担当者を任意で聴取している鹿島は、三件を受注。内訳はトンネル工事が二件、非常口工事が一件だった。大成建設はすべてトンネル工事で四件。清水建設は、品川駅と非常口、トンネル二件の計四件だった。
 JR東海は、リニア中央新幹線工事の入札で、「指名競争見積方式」と「公募競争見積方式」を採用。指名方式は、難工事で高い技術や経験が必要とされる駅部の工事で採用されており、あらかじめJR東海が数社を選定した上で、施工方法や価格を総合評価する。
 一方、公募方式は、施工方法や価格などを総合的に評価した上で順位を決め、上位の業者がJR東海と協議をして契約を決める。「名城非常口」はこの方式だった。
 リニア中央新幹線の東京・品川-名古屋間の総延長の九割近くがトンネルで、既存の東海道新幹線の駅直下に新駅を造るなど難工事も多い。建設業界関係者は「夢の大規模プロジェクト。どの社も取りたい工事だ」と話す。

◆大林組名古屋支店を捜索

 リニア中央新幹線の関連工事をめぐる入札妨害事件で、東京地検特捜部が、大手ゼネコン大林組の名古屋支店(名古屋市東区)も偽計業務妨害の疑いで家宅捜索していたことが、関係者への取材で分かった。
 東京地検特捜部は八日から九日未明にかけて、同社本社(東京都港区)などを家宅捜索。このうち、名古屋支店に対しては八日に行われたという。同社関係者は、支店幹部が事情聴取を受けたかなどについては「家宅捜索を受けたこと以上のことは答えられない」と話している。
 一方、愛知県の大村秀章知事は十一日の定例会見で、「名古屋駅周辺の用地確保や残土処理、利便性向上など、二〇二七年の開業に向けて悪影響が出ないように対応したい」と述べた。事件に関しては「受注した企業側の問題かと思うが、公共的な性格が強い事業。適正、公正に進められるべきだ」と語った。

◆JR東海が調査委設置

 リニア中央新幹線の入札妨害事件を受け、JR東海は十一日、社内に公正契約等調査委員会を設置し、大林組に対して契約手続きに関する事実関係の説明を求めることを決めた。同日、大林組の担当者を呼んで、説明を求める書面を渡した。
 JR東海によると、坪内良人専務執行役員を委員長に、社内の関係部署の責任者ら十一人でつくる。説明の回答期限は設けていない。

2017年12月11日月曜日

可児市大萱地区にリニア高架橋がつくられると(2017年12月11日 春日井リニアを問う会)

こんにちは
「春日井リニアを問う会」事務局の川本です
可児市大萱地区を高架橋でリニアが走行します
可児市が誇る美濃焼の聖地 荒川豊蔵資料館の敷地、周辺には、古窯群が散在し、自然豊かで、
歴史的な日本文化の源泉的な環境が保たれている日本文化の香り高い地域です
ここに1キロのリニア中央新幹線の高架橋ができます
防音フードが付けられるのかどうか
フードが付けられたとしても
騒音 低周波音 振動 が出てきます
フードなしだと
微気圧波 ジェット機騒音並みが出てきます

景観が失われ静かな環境に騒音が撒き散らされます

計画では 朝6時から24時まで
1時間に5本 往復10本 6分に1本走行します

トンネル工事ではここから残土が出てきます
美濃帯という地層
重金属が含有しています

では ごきげんよう

2017年12月9日土曜日

国土交通省が引き起した「東海環状道トンネル掘削残土による水質汚染事件」


再掲 リニアを考える可児の会ブログ(2017年12月9日)
 リニアトンネル工事が再び同様の事件を引き起こすのは目に見えているので、再掲した。

国土交通省が引き起こした「東海環状道トンネル掘削残土による水質汚染事件」
― 2006/06/04 13:11

<東海環状自動車道トンネル掘削残土による久々利川流域水質汚染事件について>
本資料は、可児市久々利地区住民から岐阜県宛に提出された公害調停申請書に添付されたもので
ある。

1. 事件の発端
2003 年 4 月 26 日、久々利川水系新滝が洞池に放流されたマス・アマゴ約 1000 匹の斃死事件が発生した。同時にこの時、池の水は透明度の比較的高い異様な青白色を呈していた。翌々日、岐阜県環境課および可児市環境課などによる現地調査の結果、上流に設置された東海環状自動車道路建設残土ストックヤードから強度に酸性をおびた浸出水が久々利川に流出していることが判明した。さらに、その後の調査で、この酸性浸出水は硫酸酸性であること、カドミウムなどの有害重金属が含まれていることなどが明らかになった。

当該ストックヤードとは、国土交通省直轄事業である東海環状自動車道路建設で発生した残土 を受けいれるために、可児市が富士カントリーから借地して建設した施設である。2000 年 9 月 に搬入が開始され、2003 年 4 月までに 88.7 万立方メートルの残土が搬入されていた。

2. 汚染原因と国土交通省の責任 
犬山市から可児市、御嵩町にかけた地域には、砂岩やチャートを主とした美濃帯と呼ばれる地層が分布している。この地層には黄鉄鉱などの硫化鉱物が含まれており、これらが掘り起こされ ると酸素を含んだ雨水や地下水と接触し、硫酸が生成して溶け出す。生成した硫酸はカドミウム や亜鉛などの重金属類を溶かしだす。この化学反応が起きて、ストックヤードから新滝が洞池へ 流入した硫酸酸性で重金属類を含んだ浸出水は、ため池の水を酸性にし、まるで入浴剤のような 青白色に変えたのである。 美濃帯を掘り起こして汚染が起きたのは今回が初めてではない。今から 30 年も前、1973 年に愛 知県犬山市池野地区、楽田地区、羽黒地区でイネが黄色くなる現象が起きたことで発覚した大規 模な汚染事件が起きている。原因は砕石場であった。美濃帯を掘り崩して、細かく砕いてビルな どを造る骨材として売られていた。砕石場内には細かく粉砕された岩屑が散らばって堆積し、そ れに雨が降ると先に述べたような化学反応が起きて、硫酸酸性で重金属を含んだ水が農業用水や 入鹿池に流れ込み、やがて水田へと流入していたのである。水田土壌は銅やカドミウムで汚染さ れ、産米からはカドミウムが基準値を超えて検出されることとなった。
1978 年、土壌汚染防止法に基づく汚染地域指定を受け、約 10 億円の国費をかけて 38 ヘクター ルの除染対策(作土の入れ替え)が実施された。1992 年に指定地域は解除されたが、原因者で ある砕石場の営業が続き、排水対策も不十分であるところから、行政による監視調査が今なお続 けられている。 第2次世界大戦中は、美濃帯で銅やマンガンを掘るための鉱山もあったくらいである。こうした 問題のある地域を、こともあろうに国土交通省が直営で行った道路建設工事で安易に掘削し、何 の対策もとらずに残土を谷間に埋め立てた罪は大きい。近年重要視されている地理学情報システ ム(GIS)を主管しているのは国土交通省自身ではなかったのか。

3.可児市などの責任
 可児市は、国土交通省のトンネル工事に地元自治体として便宜を図ったということなのであろうが、富士可児カントリーと交渉して谷を借り受け、残土受け入れのための造成土木工事を行っ ている。国土交通省多治見工事事務所長との間に交わされた覚え書きによれば、残土1トンあた り 1170 円が可児市に支払われることになっている。これではまるで産業廃棄物処理業者と同じ である。予定通り 95 万トンが搬入されれば、11 億 1150 万円となる。何事もなければおいしい 話だったのかもしれない。
 ストックヤードというのは、残土の仮置き場である。このために地元住民に対する説明会が開かれていなかった。市議会でもほとんど論議されることなく終わっている。ところが、実態は仮置き場ではなくて、永久的に残土を埋め立てる施設として造成され、運用された。これではまるで一種の詐欺である。
汚染が発覚してから可児市市議会で追及を受けた時、建設水道部長は「ストックヤードと英語で言った方が体裁がよいと思っただけで、実質ははじめから埋め立て処分場であった」と答弁している。このふざけた答弁にたいして、質問した議員が納得しているというのも奇妙な話である。
国土交通省には、本来汚染を事前に予測して対策をとるべきであったのにとらなかった責任があり、可児市には無知が引き起こした汚染に対する責任がある。岐阜県には水質汚濁防止法を主管し、環境を監視し、汚染があった場合の原因者の究明、指導、取り締まりをする責任があるが、この事件ではほとんどその役割を果たしていない。

4.全国で発生している類似の汚染事件
 硫化鉱物を含有する地層が分布する地帯での道路建設工事などに伴う汚染事例は全国で発生している。東北自動車道路の八甲田工区とか北海道のいくつかの地域などでの事例に関して、各種の学会や研究所報などでも発表が行われつつある。最近では、岐阜県高富町地内の県道工事で発生した残土からヒ素を含んだアルカリ性浸出水が環境中に流れ出たことが報じられており、硫化鉱物以外にも地質由来の汚染が起きることが明らかになった。もともとの地質の中に含まれてい
たとはいえ、掘り起こさなければ何も起きなかったわけで、寝た子を起こしてしまった工事そのものが汚染をおこした下手人である。

5.汚染物質について
 硫化鉱物と酸素を含んだ水とが反応して生成した硫酸は水を酸性にする。酸性水は斃死したマス・アマゴだけでなく、ヒトを含めたあらゆる生物にとって有害であり、水質汚濁防止法には pH で規定される基準(環境基準:6.5~8.5)がある。 さらに、硫酸は残土の中に高濃度で含有されていたカドミウム、鉛、銅、亜鉛などの重金属類を 溶出し、水系を汚染した。カドミウムはイタイイタイ病の原因物質であり、水質汚濁防止法でヒ トの健康を損なう有害物質として環境基準(0.01mg/l)が定められている。鉛は古来から鉛中毒 を引き起こす有毒物質として有名であり、同じく環境基準(0.01mg/l)が定められている。銅は 足尾鉱毒事件の原因物質の中心であり、鉱山廃水や鉱鐸に含まれる代表的な有害物質である。水 質環境基準はないが、農業用水基準(0.02mg/l)が定められている。亜鉛は水質汚濁防止法によ って水圏生態系に毒性を有する有害重金属として、環境基準(0.01~0.03mg/l)が定められて いる。 アルミニウムは土壌中に大量に含有される金属である。水質汚濁防止法などでは有害物質として 扱われていないが、酸性雨による森林被害の原因物質として注目されている。すなわち、酸性雨 が森林土壌中に浸透してそこに大量に存在するアルミニウムを溶脱させ、そのアルミニウムの毒 性が樹木の枯死を招いているのではないかというものである。本汚染事件でも、ストックヤード からの浸出水には高濃度のアルミニウムが含まれ、そのコロイド状粒子が新滝が洞池の異常な水 色の原因であったものと考えれられている。さらに汚染発生当時、大量の泡が沢水や新滝が洞池 の水面を覆ったが、その分析結果からも大量のアルミニウムが検出されているのである。 水田土壌に関しては、農用地土壌汚染防止法によって、カドミウム、銅の基準が定められてい る。カドミウムについては、玄米中のカドミウムが 1mg/kg を超えれば汚染米となる。くわえ て、0.4mg/kg を超えるものが準汚染米として出荷を禁じられている。先に述べた犬山地域で発 生したカドミウム汚染米発生事件では、水田土壌中のカドミウム濃度と玄米中のカドミウム濃度 とがほぼ同じレベルであることが明らかとなった。すなわち、水田土壌中のカドミウム濃度が 0.4mg/kg 前後を超える場合には要注意ということである。銅については、125mg/kg が汚染指 定地域指定要件値として定められている。 河川底質についての環境基準はないが、出水時に底質が巻き上げられて水田に流入する事態を考 えれば、本件については農用地土壌についての基準値を目安に考えるべきであろ

6.汚染の程度
酸性浸出水の pH は、最も低い場合 2 点台となる。環境基準の下限 6.5 と比べると、水素イオン濃度が約 1 万倍も高いことになる。有害重金属類は、銅が農業用水基準を超え、亜鉛は環境基 準を超えている。鉛やカドミウムは、環境基準と比べると極端に高いわけではないように見える が、環境省が全国の都道府県に機関委任して行っている河川水調査結果(公共用水域水質監視調 査結果)と比較するとかなり高い。重金属類は河川生態系に大きな影響を及ぼし、さらには底質 や水田土壌に蓄積していくことから将来的に大きな禍根となる。水田ではカドミウム汚染米の産 出の可能性も考えられる。
 浸出水の水質以外にも警戒しなければならないことがいくつかある。大萱地区では地下水を水道水源としており、底部に遮水工が施されていないストックヤードから地下に浸透した酸性浸出水がその地下水を汚染しはしないかという危惧がある。国土交通省は、ストックヤード底部には固い瑞浪層群の岩盤があるから地下浸透しないとしているが、その岩盤にひび割れがないという保証はない。
 降雨出水した時に、集水しきれない汚染酸性水が調整池に流入し、それが下流へと越流しないという保証はない。また、浸出水が降雨時に濁ることが確認されており、それらが下流へと流下し、農業用水路を経由して水田に沈殿する可能性もある。名古屋大学災害研究会の調査によれば、丸山地区の水田の水口と水尻を比較するとカドミウム濃度が水口で高い。カドミウム汚染米が産出するところまではいっていないが、この傾向が続けば水田にカドミウムが蓄積していく可能性も考えられる。
現在は、水処理プラント(後述)で重金属類が除去され、pH が中和されて放流されている が、硫酸イオン濃度はかなり高い。各種水質基準に定められてはいないが、高濃度の硫酸イオン やそれを中和するために投入された石灰に起源するカルシウムイオンの米への微妙な影響がない とはいえない。

7.応急対策について
 本汚染事件が発覚した後、直後の措置としてストックヤード下部の排水場所に炭と粗朶を敷設した。そして、3 週間以上経った 5 月 20 日、国土交通省によって応急の水処理プラントが設置 された。しかし、苛性ソーダを注入する単なる中和装置であったために、硫酸成分を中和して pH を中性に戻すことは出来たが、重金属を除去することが出来ないでたれ流し状態が続いた。なん という無知であろうか。国土交通省ともあろうものが、何故にかくも無知なのか理解に苦しむ。
6 月 10 日になって、ようやく重金属にも対応出来る処理プラントが稼働をはじめた。さら に、これが改良されて石灰投入型の処理プラントが 7 月 15 日に稼働を開始し、今日に至ってい る。目新しい汚染でもなければ、処理が難しい汚染でもない。最低限の基礎知識さえあれば、簡 単に対応出来たはずである。コンサル任せで、国の役人自身は何もやらないという我が国公務員 体制の根本欠陥を露呈したようにも思われる。
 さらに、この汚染問題については可児市もれっきとした汚染当事者であるが、こうしたクライシス発生局面では主体的な行動がほとんど見られなかった。国土交通省にすっかりお任せになってしまうのは、国と地方との上下関係によるものなのであろうか。

8.汚染の実態と対策工としての覆土の効果について
 ストックヤードに搬入されたトンネル掘削残土は 100 万トンに近く、巨大な量の堆積物が谷を埋め尽くしている。降水や地下水がその内部に浸透し、すでに述べたような化学反応や物理反応の結果として酸性を帯びてカドミウムや鉛、銅、亜鉛などの重金属類を含有した浸出水が浸みだ してくる。ストックヤードが土砂崩れなどを起こさないように防災対策として設置されていた2 本のコルゲート管(各々分岐しているが)から排水されてくる他に、ストックヤード基部埋設管 から排水されてくるもの、ストックヤードの下流にある調整池の底のあちらこちらから湧き出し てくるものがあり、その多くが pH3~5(最悪の時の値は pH2 に近い)の酸性を示し、重金属 類を含有している。
 東西コルゲートからの浸出水、および、ストックヤード基部埋設管からの浸出水はポンプアップされて、水処理プラントで処理され、処理水は調整池下流に放流されている。それ以外の浸出水は調整池を経て下流へ流れている。
こうした状態がいつまで続くかは誰にも予測がついていない。何故ならば、ストックヤード地 下で起きていることの全体がいまだに把握されていないからである。なかでも地下水の動きが全 く解明されていないのが最大の問題である。国土交通省は追加調査のために数 10 本のボーリン グを行ったが、その分析結果についての考察には合理的でない矛盾点が多々あり、「新滝が洞池 水質異常に係る対策協議会」(以下協議会という)の席上で専門委員等から再三の指摘を受けて いる。
にもかかわらず、国土交通省からストックヤード天端部を遮水材ベントナイトで覆土するとい う対策工が提案され、2004 年 11 月から工事が開始され、2005 年 3 月までに全面覆土が完了し た。この対策工が提案された際に、国土交通省多治見砂防国道事務所長後藤氏から、「ストック ヤード内部のメカニズムに不明の点があることは認めるが、覆土工によって雨水の浸透を止めれ ば、浸出水の硫酸イオン濃度や水量が減少し pH が低い状態も軽減されることは間違いないだろ うから工事をやらせてほしい。もしそれでも汚染がおさまらない時には、汚染残土の全面撤去を も視野に入れた対策のやり直しを考える」旨の発言があった。この時国土交通省が出した見通し では、天端部の 3 分の 1 を覆土すれば浸出水の水量の減少と、重金属を溶かし出さない程度まで 硫酸濃度が下がるだろうということであったが、天端部の覆土が完成して約 1 年間が経過して も、水量は減少したが強い酸性水の浸出は止まっていないし、改善の兆しもない。2006 年 1 月 にいたっても、pH が 2 点台に低下するという事態が再び発生しているのである。
添付資料に示す図1、図2に最近の浸出水の pH の変化を示した。始末の悪いことには、まと まった降雨があった翌日あたりから pH が急激に下がり、10 日あるいは 20 日間程度低いままで 推移するということが繰り返されている。天端部は完全に覆土されているのであるから、横方向 からの地下水がストックヤード地下に浸入して、硫化鉱物と新たな化学反応を起こしているので あろう。このことによって、浸出水量は減少したが、有害な酸性浸出水が発生し続ける期間はか なり長くなった可能性がある。
浸出水の水量について、国土交通省は降雨直後の最大水量を覆土工施工の前後で比較して約 10 分の 1 になったとしている。これをそのまま信じれば、酸性浸出水が発生し続ける期間も 10 倍 に延びてしまったことになる。但し、浸出水量が 10 分の 1 になったかどうかは定かではない。 何故なら,国土交通省が水量を測定しているのは東西コルゲートおよび基部埋設管からの浸出水 に限られているのであって、それ以外で湧き出している浸出水、とりわけコルゲート管に集水さ れない浸出水量を把握できていないからである。

9.事故
現在稼働中の水処理プラントは、これまでに 2 回の事故を起こしている。まず、2004 年 2 月に暴風によって電源が切れ、ポンプが停止して浸出水の汲み上げが止まって、酸性浸出水が無処 理で調整池に流入した。2006 年3月、今度は水処理プラントの pH センサーが故障して、処理水の中和がされないままに汚染水の放流が行われてしまった。
 こうした事故は現状のプラントが事故時のバックアップシステムを持っていないこと、あるいは、センサー類のきちんとしたメンテナンスが出来ていなかったことなどによって発生した。し かし、そうしたことがきちんと行われてさえも、事故は必ずいつかは発生するものである。つま り、現ストックヤードに約 90 万トンに近い硫化鉱物含有残土が存在し続ける限り酸性水が出続 け、その処理をし続けなければならない限り、なんらかのミスが事故を引き起こす可能性が常に 存在するのである。まして、東海環状自動車道路工事が終わって、国土交通省多治見砂防国道事 務所の人員と予算が減少し、水処理プラント稼動体制がおろそかになった場合には、これまで以 上にこの種の事故が頻発するようになることが懸念される。
 さらには、地震や大規模な風水害によって、ストックヤードそのものが崩落する可能性も将来的には否定しがたい。
 これらの理由から、汚染残土の全面撤去を我々は求めているのである。

10.我々住民が求める解決とは
 これまでなにもなかった河川上流に、住民に対して何の相談も交渉もなく、突如降ってわいたようにストックヤードが出現し、環境基準をはるかに超える酸性汚水を垂れ流し始めたのである。この問題の解決とは、もとの何もなかった頃の谷川の水に回復させることである。環境基準などの各種水質基準は議論や検討をするときの参考値とはなっても、目指すべき問題解決のゴールとすべき値ではない。
 また、河川上流に常に監視や点検を怠ってはいけない水処理プラントのような施設が存在し続けなければならない状態も、我々が目指すゴールとは程遠い。地震や風水害による決壊、崩壊を憂慮しなければならない状態もゴールではない。
※ 水処理プラントは維持費がかかるとして現在(2017年)稼働していない。