2017年2月3日金曜日

廃炉費用 いつのまにか高く付く(2017年2月3日中日新聞)

廃炉費用 いつの間にか高くつく 

2017/2/3 中日新聞
 福島第一原発の天文学的事故処理費用、「過去に原発の恩恵を受けてきたから」と、結局は国民に広くツケ回し。過去に支払い済みの料金を値上げして、差額を徴収するなんて。そんなの、ありか。
 東京電力福島第一原発の事故処理費。二十一兆五千億円。東京都の予算の三倍以上、とんでもない数字である。二〇一三年の暮れまでは十一兆円と見積もられていたが、二倍近くに増えた。
 溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しだけでプラス六兆円という。
 何しろ放射能の壁の中、人が直接触れられない、近づくことも不可能な別世界。とてつもなく困難な作業ということである。
 東電は今月、2号機直下にロボットを投入し、溶け落ちた燃料の在りかを探る。事故から六年になろうとする今も、“敵”の居場所さえ、はっきりとはつかめていない。長い時間と巨額の費用をかけて、牛歩を続けていくしかない。この先いくらかかるか分からない、天井知らずということだ。
 その費用は、誰が払うのか。
 東電が賄うならば、電気代、政府が肩代わりするなら税金-。結局は、消費者、国民に、ツケが回るということだ。
 賠償費用も約八兆円。経済産業省の考えるツケ回しの手法は、あまりにも理不尽だ。
 託送料金。すなわち、電力自由化後も既存大手の独占状態にある送電線の利用料を引き上げて、原発の電気を買わない新電力の利用者からも、「過去分」として、広く、浅く、取り立てようというのである。「新電力の利用者も、過去に原発の恩恵にあずかったから-」と、よく分からない理由をつけて、東電救済にひた走る。しかもそれが、われわれの知らないところで決められる。
 政府は避難指示を徐々に解除し、賠償を順次打ち切る方針だ。
 被害者の救済には原因企業の存続が不可欠と言いながら、事故原因の究明、被害の実態把握はそこそこに、補償費の抑制をひたすら急ぐ-。水俣事件とそっくりだ。
 安全対策に限りはない。欧米や台湾で原発の新設が行き詰まるのは、福島に学んだからだ。“安全代”の急騰が、東芝という巨大企業の屋台骨さえ、揺るがしているではないか。
 もちろん、被害者の補償を含め、事故の後始末には十分な予算をつぎ込むべきである。しかし、だからこそ、「原発の電気は安い」などとは言わせない。

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