2017年12月19日火曜日

「難工事」立件の壁 リニア巨額受注、独禁法適用で新局面(2017年12月19日中日新聞)

「難工事」立件の壁 リニア巨額受注、独禁法適用で新局面 

2017/12/19 中日新聞
 リニア中央新幹線の建設工事の入札を巡る東京地検特捜部の捜査は18日、独禁法違反容疑でのスーパーゼネコンへの家宅捜索で新たな局面を迎えた。水面下で違法な受注調整を繰り返したとの疑惑をゼネコン側は完全否定。発注者のJR東海も「契約は適正に行われた」との立場だ。ただ、高い技術力が求められる難工事が多く「請け負える企業は限られる」との指摘も出ており、立件へのハードルとなりそうだ。

◆ターゲット

 「何も不正なことはなかったと思います」。十八日朝、集まった報道陣に、鹿島の幹部は困惑気味に話した。特捜部が同社の本社や支店ビルを捜索したのは、この約三時間後。約四キロ離れた清水建設の本社も対象となった。
 東京地検特捜部による捜査の動きは、偽計業務妨害容疑での大林組への家宅捜索で明らかになった。対象は地下トンネルと地上をつなぐ名古屋市の「名城非常口」新設工事。落札できなかった鹿島は当初、公正な入札を妨害された“被害者”の立場だった。
 しかし、独禁法を所管する公正取引委員会が捜査に加わる新展開で、特捜部のターゲットが大林組一社の不正だけではなく、工事全体を舞台にした業界の慣習へ移ったとの見方が広がっている。

◆技術が必要

 リニア中央新幹線は、二〇二七年に先行開業する東京・品川から名古屋までの二百八十六キロのうち、86%をトンネルが占める。山梨、長野、静岡三県を通る約二十五キロの南アルプストンネル建設は地表から約千四百メートル付近を掘削。トンネルに強い負荷がかかり、高圧の水脈に突き当たる恐れもある。
 「入札の形式を取ってはいるが、アルプスをぶっ通す工事なんて技術力と体力がある大手じゃないとできないことは、分かりきっていることだ」。ゼネコン業界に詳しい弁護士は断言した。
 名古屋駅は地下約三十メートルに建設予定で、東海道新幹線や在来線の運行を続けながら進める難工事。地下約四十メートルでの品川の新駅工事も、新幹線の運行が終わった夜間にしか実施できず、関係者は「海に近く、地盤が軟弱で、簡単ではない」と指摘する。

◆意思の連絡

 大林組の幹部は取材に、鹿島側との情報交換を認める一方、内容はJR東海から出された入札条件の再確認にとどまり、違法性はないとの認識を示している。
 「情報交換」や「再確認」は、独禁法違反に当たる行為なのか。
 独禁法に詳しい植村幸也弁護士は、不正な受注調整の有無の認定には「業者間で意思の連絡があったかどうかがポイントになる」と解説する。
 工事の配分に関する具体的なやりとりがなくても、ある業者が一方的に特定の工事を取りたいとの意向を伝えたり、役員や担当者間で工事に関する会話をした状況が確認されたりするだけでも、独禁法違反に問われる可能性があるという。
 一方、元検事の郷原信郎弁護士は、そもそもトンネル掘削などの難工事を請け負える企業が少ないため、過去の談合事件などと同様の捜査では解明が難しいと指摘する。

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